331 言い換えは可能だけど… pour se fabriquer des épines qui ne servent jamais à rien ?

動詞

違いと違和感

今回のフレーズにある「se fabriquer」に似ているものに「se faire」があります。 

この2つの違いと、このフレーズを言い換えた場合の違和感について考えます。 

このフレーズの場所と背景

では、単語に入る前に、今回のフレーズ「pourquoi elles se donnent tant de mal pour se fabriquer des épines qui ne servent jamais à rien ?」の場所と背景を確認しておきます。 

このフレーズは第7章の後半にある王子さまのセリフの一部です。 

「pour se fabriquer des épines qui ne servent jamais à rien」

ここでの「pour」は「se donner du mal pour + 動詞の原形(~するのに苦労する)」という表現の一部として機能しています。 

そして「se fabriquer」が原形になっているのも、この表現の一部だからです。 

ここでの「se」は再帰代名詞、「fabriquer」は「~を作る」という意味ですが、再帰代名詞の「se」を伴なう代名動詞としての使い方ですので、「自分に~を作る」という意味になります。 

再帰代名詞や代名動詞については、このシリーズの第140回に詳細があります。 

「des」は不定冠詞複数形、「épines」は「トゲ」という意味の女性名詞「épine」の複数形です。 

ここでの「qui」は関係代名詞です(詳細はこのシリーズの第305回参照)。 

「servent」は「servir」の活用形(現在形)で、「(人が主語で)仕える」「(人に)食事を出す」「(商人が客の)相手をする」「(事柄が主語で)(人の)役に立つ」など、たくさんの意味があります。 

ただしここでは「servent(servir) à ~」という形になっているので、「~の役に立つ」という意味に限定されます。 

「ne ~ jamais」は「決して~ない」、「ne ~ rien」は「何も~ない」という意味で、両方とも否定表現です。 

「ne servir jamais à rien」で「決して何の役にも立たない」という意味になります。 

背景を見てみると

生死にかかわる飛行機の修理にかかりきりの語り手の男性は、羊と花の関係という、大事とは思えない王子さまの質問に対して適当に答え、2人は険悪な状況になってしまいます。 

王子さまは、ある星で出会った他の男性について語ることで、男性が忘れかけていたことを思い出させようとしています。 

フレーズの全体は「Et ce n’est pas sérieux de chercher à comprendre pourquoi elles se donnent tant de mal pour se fabriquer des épines qui ne servent jamais à rien ?」です。 

今回扱うのは、この長い疑問文の終わりの部分です。 

「Et ce n’est pas sérieux de chercher à comprendre」はこのシリーズの第329回で、「pourquoi elles se donnent tant de mal」は第330回で扱っています。 

2つの「自分に~を作る」

前述通り「se fabriquer」は「自分に~を作る」ですが、この部分を「se faire」で言い換えたとしても、和訳すれば同じく「自分に~を作る」という意味になります。 

ただしこの2つにはニュアンスの違いがあるので、例文と一緒にご紹介します。 

「se faire」

「自分に~を作る」という意味で広く使えるのは「se faire」の方です。 

例えば 

  • Il se fait les amis facilement. 
    (簡単に友だちを作る) 
  • Il se fait une idée de ce projet. 
    (プロジェクトのアイデアをまとめる) 

「se fabriquer」

「se fabriquer」にも「自分に~を作る」という意味がありますが、特に何かを意図的に作り上げる、または捏造するというニュアンスが強くなります。 

例えば 

  • Il se fabrique souvent des histoires dans sa tête. 
    (よく頭の中で物語を作り上げる) 
  • Il se fabrique une excuse pour éviter la réunion. 
    (会議を避けるために言い訳を作り上げる) 

言い換えると?

今回のフレーズにあるのは、何かを意図的に作り上げたり捏造したりするニュアンスが強い「se fabriquer」の方です。 

主語は「花たち」で、目的語は「des épines(トゲ)」なので、「se fabriquer」に捏造するニュアンスはなく、「(思い入れたっぷりに)作り上げる」という意味を持たせています。 

そのため、「se fabriquer des épines」の部分を「se faire des épines」にすると、思い入れなど微塵も感じられない、ただ「自分にトゲを作る」になってしまいます。 

そしてその後に続く「qui ne servent jamais à rien(決して何の役にも立たない)」という、強い思い入れのある否定表現との整合性が全くない、どこか不自然な感じになってしまうのです。 

この記事を音声で聞くなら

シリーズ【フランス語版 星の王子さまのフレーズ】は、ポッドキャストでも配信しています。 

下のリンクのクリックでこの記事に該当するエピソードに飛びますので、発音の確認などにお使いくださいね!

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