330 フランス語らしい考え方を理解しよう!  pourquoi elles se donnent tant de mal

動詞

フランス語らしさ

今回のフレーズには、フランス語独特の言い回しがあります。 

和訳すれば単純になる内容を、「なぜこんなに回りくどい言い方をするのか」と思ってしまうような表現をするからです。 

でもこれこそがフランス語らしさであり、逆に日本語にも、フランス語よりも面倒な表現が存在しています。 

このフレーズの場所と背景

では、単語に入る前に、今回のフレーズ「pourquoi elles se donnent tant de mal」の場所と背景を確認しておきます。 

このフレーズは第7章の後半にある王子さまのセリフの一部です。 

「pourquoi elles se donnent tant de mal」

「pourquoi」は「なぜ」「どうして」、「elles」は「彼女たち」「それら」、ここでの「se」は再帰代名詞です。 

「donnent」は「~を与える」という意味の「donner」の活用形(現在形)ですが、再帰代名詞の「se」を伴なう代名動詞としての使い方ですので、「自分に~を与える」という意味になります。 

再帰代名詞や代名動詞については、このシリーズの第140回に詳細があります。 

「tant de +(無冠詞の名詞)」の形で数や量が多いことを表します。 

「これほど多くの~」「そんなにたくさんの~」という意味になります。 

ここでの「mal」は「悪」「害悪」「痛み」「苦労」などの意味の男性名詞です。 

背景を見てみると

生死にかかわる飛行機の修理にかかりきりの語り手の男性は、羊と花の関係という、大事とは思えない王子さまの質問に対して適当に答え、2人は険悪な状況になってしまいます。 

王子さまは、ある星で出会った他の男性について語ることで、男性が忘れかけていたことを思い出させようとしています。 

フレーズの全体は「Et ce n’est pas sérieux de chercher à comprendre pourquoi elles se donnent tant de mal pour se fabriquer des épines qui ne servent jamais à rien ?」です。 

今回扱うのは、この長い疑問文の中ほどの部分です。 

全体の意味

さて、冒頭で触れたフランス語らしい表現とは、「se donner tant de mal」の部分です(動詞は原形にしてあります)。 

前述通りここでの「mal」は男性名詞で、副詞の「mal(悪く/まずく/下手に)」とは違い、「悪」「害悪」「痛み」「苦労」などの意味です。 

どれもマイナスイメージの意味ですが、動詞「donner」と組み合わされると「苦労」という意味に絞られます。 

例としては 

  • donner du mal à(人)「人に苦労をかける」 
  • se donner du mal pour +(動詞の原形)「~するのに苦労する」 

というのがあります。 

今回扱う部分には入れていないのですが、実はこの後に「pour +(動詞の原形)」という形が続いています。 

なので、「tant de ~(そんなにたくさんの~)」を加えた「se donner tant de mal」は「(~するのに)大変な苦労する」という意味です。 

つまり今回扱う部分の「pourquoi elles se donnent tant de mal」とは「なぜ彼女たちが(~するのに)大変な苦労をするのか」ということです。 

ちなみにここでの「elles」は、「花たち」のことです。 

回りくどい?

なお、この「se donner du mal pour + 動詞の原形(~するのに苦労する)」という言い回しは、慣れるまでは面倒に感じるかもしれません。 

前述通り「donner」は「~を与える」という意味なので、「donner du mal à 人(人に苦労をかける)」は「人に苦労を与える」という言い方です。 

そして動詞を「se donner(自分に~を与える)」にすることで「se donner du mal pour + 動詞の原形(~するのに苦労する)」にしているのですから、日本語話者からすると回りくどく感じてしまうのです。 

日本語も面倒?

でもこうした面倒くささは、実は日本語にもあります。 

例えば「気に入る」という日本語は、外国人にはわかりにくい表現なのです。 

フランス語なら「Ça me plaît.」で済むのに、『「気」に「入る」って、どういうこと?』と質問されます。 

フランス人に「気」とは何かを説明するのは非常に面倒ですし、おまけになぜ「入る」と言うのかと聞かれるのです。 

日本語ネイティブが何も考えずに「気に入る」と言っているように、フランス語ネイティブも面倒などと思わずに「se donner du mal pour + 動詞の原形(~するのに苦労する)」という表現を使っています。 

この記事を音声で聞くなら

シリーズ【フランス語版 星の王子さまのフレーズ】は、ポッドキャストでも配信しています。 

下のリンクのクリックでこの記事に該当するエピソードに飛びますので、発音の確認などにお使いくださいね!

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