英語が得意だと不利に?
今回のフレーズには関係代名詞が含まれています。
ただしこの関係代名詞は、英語とは決定的に違う使い方をするケースなので、英語が得意な方は注意が必要かもしれません。
例文とともにご紹介します!
このフレーズの場所と背景
では、単語に入る前に、今回のフレーズ「Même les fleurs qui ont des épines ?」の場所と背景を確認しておきます。
このフレーズは、第7章の始めにあります。
第7章の最初の会話部分の3行目にあるフレーズで、王子さまのセリフです。
「même les fleurs qui ont des épines」
ここでの「même」は副詞としての使い方です。
「même + 名詞(または形容詞句など)」の形で「~すら」「~さえ」という意味です。
「les」は定冠詞複数形、「fleurs」は「花」という意味の女性名詞「fleur」の複数形です。
ここでの「qui」には「?」がないので関係代名詞です。
「ont」は「avoir」の活用形(現在形)、「des」は不定冠詞複数形、「épines」は「トゲ」という意味の女性名詞「épine」の複数形です。
背景を見てみると
飛行機の修理がうまくいかず、かなり焦り始めた語り手の男性ですが、王子さまはそんな事情はお構いなしに、羊と花の関係を聞いてきます。
王子さまが「羊は花も食べるの?」と聞くので、それどころではない男性は「羊は何でも食べる」と答えてしまいます。
今回のフレーズからは、男性が答えた「羊は何でも食べる」ということに強く反応した、王子さまの驚きが伝わってきます。
王子さまの驚き
王子さまが驚いているのがわかる部分とは、「même les fleurs」という表現です。
前述通り、ここでの「même」は副詞としての使い方で、「même + 名詞(または形容詞句など)」の形で「~すら」「~さえ」という意味です。
つまり、「même les fleurs」で「花でさえ」という意味になります。
なお、「même」にはいくつかの使い方があり、このシリーズの第147回でまとめていますので、よろしければご覧ください。
花を擬人化している?
そして「qui ont des épines」の部分は「les fleurs(花)」を修飾しています。
前述通り、ここでの「qui」は関係代名詞で「les fleurs(花)」のことなのですが、これに違和感を感じた方はいらっしゃらないでしょうか?
というのも、「qui」は疑問詞として使う場合には「誰」という意味で「人」を指すので、人ではない「les fleurs(花)」を指すのは不自然に感じてもおかしくないからです。
疑問詞の「qui」を英訳すれば「who」になるので、「ここでは花を擬人化しているのかも?」と感じても不思議ではありません。
英訳しにくい「qui」
でもこれが、フランス語と英語の違いです。
フランス語の代表的な関係代名詞には、今回扱う「qui」の他に「que」があり、「qui」は「who」に、「que」は「which」として捉えられることが多いと思います。
確かに、「qui」や「que」が疑問詞なら、「who」と「which」でいいのですが、関係代名詞の場合は使い方が違うので、この訳は当てはまりません。
「qui」になる理由
では、今回のフレーズの関係代名詞がなぜ「qui」になっているのかと言うと、ここでの「qui」は「qui ont des épines」の部分の主語になっているからです。
繰り返しになりますが、対象が人でもモノでも関係なく、節(小さなフレーズ)の中の主語になっているから「qui」が使われているのです。
これがもしも目的語になるなら、「que」が使われることになります。
頭を切り替えよう!
では、この「qui」と「que」の関係をハッキリさせるために、今回のフレーズの「花」の部分を「女の子」つまり「人」に代えてみます。
今回のフレーズは:
「Même les fleurs qui ont des épines ?(トゲのある花でさえも?)」
これを「女の子」にすると:
「Même la fille qui t’aime ?(君のことを好きな女の子さえも?)」
になります。
この場合は、「la fille(女の子)」が主語なので、関係代名詞は「qui」です。
ところが、「女の子」が目的語になると:
「Même la fille que tu aimes ?(君が好きな女の子でさえも?)」
になります。
対象は「女の子」つまり「人」ですが、「que」を使うのです。
英語が得意な方ほど、頭の切り替えが必要になる例ですね!
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シリーズ【フランス語版 星の王子さまのフレーズ】は、ポッドキャストでも配信しています。
下のリンクのクリックでこの記事に該当するエピソードに飛びますので、発音の確認などにお使いくださいね!
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