動物好きなフランス語?
フランス語には、動物の名前や、動物の身体の一部を借りた名詞がたくさん存在します。
そうした言葉は、「それが何に見えるか」という形だけではなく、「それがどんな風に動くか」という動作を非常に重視して名前をつけているのがわかります。
フランス語らしさの一端でもある、動物に由来する名詞のうち、道具の名前についてご紹介します。
「皿をなめる」
今回はよく似た名前の料理用の道具を2つ扱いますが、両方とも「lèche」から始まります。
「lèche」とは、「なめる」という意味の動詞「lècher」の3人称単数現在形です。
1つ目の道具は、「lèche-plat」。
直訳すると「皿をなめる」になる料理用の道具とは、お皿に残ったソースを1滴残らず他の容器に移したり、ボウルに入ったクリームや生地などを残さずすくい取るための「ゴムベラ」のことです。
まるで動物が(人間の子どもかもしれませんが)お皿をなめているかのように見える道具なので、ついた名前ということですね。
例えば、
- Je racle le bol avec le lèche-plat.
(ゴムベラでボウルの中身をきれいに取る)
のように言います。
ちなみに、ゴムベラは「lèche-plat」以外にも「maryse」とも呼ばれます。
この「maryse」は女性の名前が由来です。
名前の場合は最初が大文字になり、「Maryse」という表記なのですが、ゴムベラの場合は大文字にせず「maryse」になります。
そして女性の名前のせいか、ゴムベラの意味でも女性名詞になります。
そのため、前述の例文を「maryse」で言い換えると、
- Je racle le bol avec la maryse.
(ゴムベラでボウルの中身をきれいに取る)
になります。
「フライドポテトをなめる」?
「lèche」から始まる料理用の道具の2つ目は、「lèchefrite」です。
現代フランス語で直訳すると「フライドポテトをなめる」になるのは、オーブンで使うオーブン皿や天板のことです。
前述通り、「lèche」は「lècher(なめる)」の3人称単数現在形です。
そして現在のフランスで「frite」と言えば、誰でも「フライドポテト」としか思いません。
でも「lèchefrite」という道具は、13世紀には存在していたことがわかっています。
なおその当時は、フライドポテトはおろか、ヨーロッパにはジャガイモすらありませんでした。
そのため、ここでの「frite」とは、「揚げる/炒める/熱い脂で調理する」という意味の動詞「frire」の過去分詞女性形です。
ではなぜ「lèchefrite」がオーブン皿や天板になったのかと言うと、それは動物が串焼き肉からしたたる肉汁をペロペロとなめている姿から、と言われています。
この言葉ができた13世紀当時、肉は串にさして、暖炉の直火で焼くのが一般的でした。
でもおいしい肉汁は、受け皿がないと火の中に落ちてしまいます。
そこで「lèchefrite」という道具ができたのですが、現在はオーブンを使うことが多くなったので、「オーブン皿/天板」という意味で使われています。
例えば
- Mets la lèchefrite sous poulet.
(鶏肉の下にオーブン皿を置いて)
のように言います。
ハイフン(-)は?
ところで、どちらも「lèche」から始まる料理の道具である「lèche-plat(ゴムベラ)」と「lèchefrite(オーブン皿/天板)」ですが、ゴムベラにはハイフン(-)があり、オーブン皿にはハイフン(-)がありません。
その理由は、「lèchefrite(オーブン皿/天板)」が例外だからです。
前述通り、「lèchefrite(オーブン皿/天板)」は13世紀には存在していたという、古くからある名詞で、この形が定着していました。
その一方、「lèchefrite(オーブン皿/天板)」以外の「動詞 + 名詞」の形をとる単語は、ハイフンでつなぐ決まりになったのです。
フランス語には「動詞 + 名詞」の形の単語がいくつもありますが、「lèchefrite(オーブン皿/天板)」以外はハイフンでつながれています。
フランス語の決まりは、かなり厳格なものなのですが、あまりにも古くから使われているせいで、今さら他の単語と同じ決まりにできなかった、このような例外もあるんです!
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