わかりにくい冠詞
今回のフレーズにある名詞には、それぞれ定冠詞がついています。
日本語には存在しないので、冠詞をつけることは意識していても、定冠詞をつけるべきなのか、不定冠詞をつけるべきなのかで、迷うこともあるのでは?
今回のフレーズの定冠詞は、なぜ不定冠詞ではないのかを深掘りしていきます。
このフレーズの場所と背景
では、単語に入る前に、今回のフレーズ、「C’est comme pour la fleur.」と「C’est comme pour l’eau.」の場所と背景を確認しておきます。
このフレーズは、第26章の中ほどにあります。
第26章の1枚目と2枚目の挿絵のほぼ中間に、語り手の男性が「Bien sûr…(もちろん…)」と3回繰り返す場面があるのですが、その前後にあるフレーズで、どちらも王子さまのセリフです。
「c’est」
「c’est」は、「これ(それ・あれ)」を意味する「ce」と、être の3人称単数の活用形「est」が合わさってできています。
意味は「これ(それ・あれ)は~です。」
「comme」
「感動のcomme」「比較のcomme」としてご紹介済みですが、ここでは「比較のcomme」で、「~のように」「~のような」という意味です。
「pour」
「pour」は前置詞で、いろいろな意味を持つのですが、「~のために」「~の理由で」「~にとっては」などが代表的です。
「la fleur」
「la」は、定冠詞単数女性形です。
「fleur」は女性名詞で、「花」を意味します。
「l’eau」
「l’」は、定冠詞単数形の省略形です。
次の「eau」が母音から始まっているので、この形が使われています。
「eau」は女性名詞で、「水」を意味します。
背景を見てみると
別れの時が近づいても現実を受け止めたくない男性は、まるで「ウソだと言ってくれ!」とばかりに王子さまに詰め寄ってしまいます。
でも王子さまは男性の問いに答えることはせず、「大事なものは目に見えない」と言い、その例を挙げる場面で、今回のフレーズになるのです。
「la fleur」と「l’eau」
この「目に見えない大事なモノ」こそ、今回のフレーズで語られている「la fleur(花)」と「l’eau(水)」です。
この花と水にはそれぞれ定冠詞がついているので、「特定できる何か」だということがわかります。
ここでの花は「王子さまの星のバラの花」であり、水は「星の輝く砂漠を一晩中歩いて見つけた井戸水」です。
「特別な」花と水
王子さまは花に水をやり、風から守るためについ立てをしてやり、寒さから守るためにガラスの覆いをかけてやりました。
そして男性は、夜の砂漠を一晩中歩くだけでなく、王子さまが眠った時には抱きかかえて歩き続け、王子さまには重すぎる井戸水をくみ上げ、その際には水の入った桶の重みで滑車の音がしていました。
「目に見えないモノ」とは?
「大事なものは目に見えない」と王子さまは言いますが、「la fleur(花)」と「l’eau(水)」自体は目に見えるものです。
王子さまが言いたいのは、花のために費やした時間や労力であり、水を得るために費やした時間や労力でした。
こうした背景を持っているからこそ、「la fleur(花)」と「l’eau(水)」には定冠詞がついているんですね!
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