倒置文に慣れるまで
今回のフレーズは疑問文のため、倒置されている部分があります。
実際の会話では、疑問文で必ずしも倒置するわけではないのですが、書き言葉には多いのです。
そのため、やはり慣れる必要がありますが、それまでは、倒置文を見つけたらやるべきことがあります。
このフレーズの場所と背景
では、単語に入る前に、今回のフレーズ、「D’où viens-tu, mon petit bonhomme ?」の場所と背景を確認しておきます。
このフレーズは、第3章の後半にあります。
1枚目の挿絵から2行目にあるフレーズで、語り手の男性のセリフです。
「d’où viens-tu」
「d’où」は、前置詞の「de」と疑問詞で「どこ」という意味「où」が合わさってできています。
「viens」は「来る」という意味の動詞「venir」の活用形(現在形)です。
「tu」は「きみ」「おまえ」などという意味です。
「mon petit bonhomme」
「mon」所有形容詞1人称単数で「わたしの」、「petit」は形容詞で、「小さい」「幼い」「かわいい」などの意味があります。
「bonhomme」は男性名詞で、男性への呼びかけに使われる言葉です。
「petit bonhomme」は、男の子に対する親しみを込めた呼びかけ語です。
「坊や」や「(呼びかける時に使われる)ぼく」に当たります。
背景を見てみると
語り手の男性は当初から不思議に思っていましたが、王子さまが他の惑星からやって来たことは、ほぼ確定的になりました。
ただし王子さまが、自分から男性に質問することはあっても、男性の質問にまともに答えることはありません。
それでも、「他の惑星」ということに興味をそそられた男性は、今回のフレーズを始めとした質問がやめられないのです。
倒置文にやるべきこと
さて、今回のフレーズは疑問文のため、倒置が起きて「viens-tu」になっています。
倒置文を見つけたらやるべきことは、まずはシンプルに、倒置を元に戻してみることです。
すると「D’où viens-tu ?」というフレーズが、「D’où tu viens ?」になります。
冒頭で触れた通り、疑問文だからといって、必ずしも倒置しません。
というよりも、現在では倒置文にしない人の方が多いと思います。
疑問詞があるなら
そしてさらに、疑問詞がある場合は、疑問詞は文頭に来ているので、その位置を疑ってみます。
目的語が疑問詞になった場合でも文頭に来てしまうので、本来あるべき位置に疑問詞を移動してみるのです。
今回のフレーズなら、「d’où」には前置詞の「de」が含まれているので、本来は動詞の後にあるべきです。
なので「Tu viens d’où ?」にして考えてみるのです。
見えてくる形
すると、「venir + de ~」という形が見えてきます。
「venir + de +(場所)」という形は、「~から来る」「~の出身である」という意味になります。
「où(どこ)」は、もちろん場所を表しているので、「Tu viens d’où ?」は「きみはどこの出身?」という意味になるのです。
今回のフレーズにある「viens」が現在形であるということもポイントで、「~から来た」という過去表現ではなく、「~の出身だ」という方が、時制の面でもしっくりきます。
実際の会話では?
なお、「D’où viens-tu ?」の倒置を止めて「D’où tu viens ?」に、さらに疑問詞の位置を移動して「Tu viens d’où ?」にしましたが、実はこの「Tu viens d’où ?」という言い方も、実際の会話でよく聞きますし、私自身も使うことがあります。
というのも、「D’où viens-tu ?」→「D’où tu viens ?」→「Tu viens d’où ?」という順番は、どちらかと言うと書き言葉の堅苦しいフレーズから、どんどんくだけた言い方になっているからです。
特に最後の「Tu viens d’où ?」に至っては、フランス語のテストを受けたら間違いだと判定されてしまうかもしれませんが、他の言語と同じく、時代とともに変わってきているのです。
さらに言うと、そもそも親しい間柄で使う2人称代名詞である「tu」を使う関係なら、まったく問題ないのです。
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シリーズ【フランス語版 星の王子さまのフレーズ】は、ポッドキャストでも配信しています。
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