意味は同じでニュアンスが変わる
フランス語の形容詞は、名詞の後に付くのが普通です。
今回のフレーズにある「long(長い)」という言葉は、名詞の前に付いたり、後に付いたりします。
どちらでも意味は「長い」なのですが、ニュアンスは変わり、発音の仕方も変わります。
このフレーズの場所と背景
では、単語に入る前に、今回のフレーズ、「J’ai fait un long voyage et je n’ai pas dormi…」の場所と背景を確認しておきます。
このフレーズは、第10章の始めにあります。
第10章の挿絵から8行目にあるフレーズで、王子さまのセリフです。
「j’ai fait un long voyage」
「j’ai」は「わたし」という意味の「je」の省略形「j’」と「avoir」の活用形(現在形)「ai」が合わさったものです。
「fait」は「~を作る」「~をする」という意味の「faire」の過去分詞なので、「ai(avoir)+(動詞の過去分詞)」で、過去を表す表現です。
「un」は不定冠詞単数男性形、「long」は「長い」、「voyage」は「旅」「旅行」などを意味する男性名詞です。
「et je n’ai pas dormi」
「et」は「そして」、「je」は「わたし」、「n’ai」は否定の「ne」の省略形「n’」と「avoir」の活用形(現在形)の「ai」が合わさったものです。
否定の「ne(の省略形)」と「pas」によって、否定表現になっています。
「dormi」は「眠る」という意味の「dormir」の過去分詞なので、「ai(avoir)+(動詞の過去分詞)」で、過去を表す表現です。
背景を見てみると
旅に出た王子さまが最初にやって来たのは、年老いた王様が1人で暮らす小さな星でした。
王子さまを見つけた王様は「家来がやって来た」とばかり、大喜びです。
でも長旅で疲れているのに、座る場所すらない王子さまは、王様の前であくびをしてしまいます。
すると王様は、礼儀に反すると王子さまをたしなめ、あくびを禁止すると言います。
それに対して、王子さまは我慢できないと反論し、今回のフレーズでその理由を述べるのです。
語順で形は変化する?
さて冒頭で触れた通り、「long(長い)」という形容詞は、名詞の前に付いても後に付いても意味は「長い」です。
形容詞は名詞によって形が変わるものがあり、「long」も性や数で変わりますが、名詞が同じなら、形はそのままです。
- un long voyage(長い旅)
- un voyage long(長い旅)
語順で何が変わる?
ただし同じ「長い」でも、他の多くの形容詞のように、名詞の後に付いた場合は、ただ単に「長い」というだけの意味ですが、前に付いた場合は、感情が伴うなどの主観的な表現になります。
つまり「un voyage long」なら単なる「長旅」ですが、「un long voyage」なら「長くつらい旅」であったり、「長くていろいろな経験をした旅」であったりといった、何らかの感情が伴うのです。
こうした感情がプラスイメージなのか、マイナスイメージなのかは、文脈によります。
「長い」という意味自体までは変わらずとも、ニュアンスが変わるのは確かです。
その結果、名詞の前に置かれる形容詞は、発音する時に多少のアクセントが置かれます。
- un long voyage(長くて〇〇な旅)
- un voyage long(長旅)
名詞による変化
なお前述通り、「long」は名詞の性や数で形が変わる形容詞です。
【男性形単数】(long)
- un long voyage(長くて〇〇な旅)
- un voyage long(長旅)
【女性形単数】(longue)
- une longue journée(長くて〇〇な1日)
- une journée longue(長い1日)
【男性形複数】(longs)
- de longs cheveux(長くて〇〇な髪)
- des cheveux longs(長い髪)
【女性形複数】(longues)
- de longues heures(長くて〇〇な時間)
- des heures longues(長時間)
同じタイプの他の形容詞
名詞の前についてニュアンスなどが変わる形容詞は、他にもあります。
このシリーズですでにご紹介しているものには、次のモノがあります。
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シリーズ【フランス語版 星の王子さまのフレーズ】は、ポッドキャストでも配信しています。
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