373 語順でニュアンスや発音の仕方が変わる「long」 J’ai fait un long voyage et je n’ai pas dormi…

その他(王子さま)

意味は同じでニュアンスが変わる 

フランス語の形容詞は、名詞の後に付くのが普通です。

今回のフレーズにある「long(長い)」という言葉は、名詞の前に付いたり、後に付いたりします。

どちらでも意味は「長い」なのですが、ニュアンスは変わり、発音の仕方も変わります。

このフレーズの場所と背景 

では、単語に入る前に、今回のフレーズ、「J’ai fait un long voyage et je n’ai pas dormi…」の場所と背景を確認しておきます。 

このフレーズは、第10章の始めにあります。 

第10章の挿絵から8行目にあるフレーズで、王子さまのセリフです。 

「j’ai fait un long voyage」 

「j’ai」は「わたし」という意味の「je」の省略形「j’」と「avoir」の活用形(現在形)「ai」が合わさったものです。 

「fait」は「~を作る」「~をする」という意味の「faire」の過去分詞なので、「ai(avoir)+(動詞の過去分詞)」で、過去を表す表現です。 

「un」は不定冠詞単数男性形、「long」は「長い」、「voyage」は「旅」「旅行」などを意味する男性名詞です。 

「et je n’ai pas dormi」 

「et」は「そして」、「je」は「わたし」、「n’ai」は否定の「ne」の省略形「n’」と「avoir」の活用形(現在形)の「ai」が合わさったものです。 

否定の「ne(の省略形)」と「pas」によって、否定表現になっています。 

「dormi」は「眠る」という意味の「dormir」の過去分詞なので、「ai(avoir)+(動詞の過去分詞)」で、過去を表す表現です。 

背景を見てみると 

旅に出た王子さまが最初にやって来たのは、年老いた王様が1人で暮らす小さな星でした。 

王子さまを見つけた王様は「家来がやって来た」とばかり、大喜びです。 

でも長旅で疲れているのに、座る場所すらない王子さまは、王様の前であくびをしてしまいます。 

すると王様は、礼儀に反すると王子さまをたしなめ、あくびを禁止すると言います。

それに対して、王子さまは我慢できないと反論し、今回のフレーズでその理由を述べるのです。 

語順で形は変化する?

さて冒頭で触れた通り、「long(長い)」という形容詞は、名詞の前に付いても後に付いても意味は「長い」です。

形容詞は名詞によって形が変わるものがあり、「long」も性や数で変わりますが、名詞が同じなら、形はそのままです。

  • un long voyage(長い旅)
  • un voyage long(長い旅)

語順で何が変わる?

ただし同じ「長い」でも、他の多くの形容詞のように、名詞の後に付いた場合は、ただ単に「長い」というだけの意味ですが、前に付いた場合は、感情が伴うなどの主観的な表現になります。

つまり「un voyage long」なら単なる「長旅」ですが、「un long voyage」なら「長くつらい旅」であったり、「長くていろいろな経験をした旅」であったりといった、何らかの感情が伴うのです。

こうした感情がプラスイメージなのか、マイナスイメージなのかは、文脈によります。

「長い」という意味自体までは変わらずとも、ニュアンスが変わるのは確かです。

その結果、名詞の前に置かれる形容詞は、発音する時に多少のアクセントが置かれます。

  • un long voyage(長くて〇〇な旅)
  • un voyage long(長旅)

名詞による変化

なお前述通り、「long」は名詞の性や数で形が変わる形容詞です。

【男性形単数】(long)

  • un long voyage(長くて〇〇な旅)
  • un voyage long(長旅)

【女性形単数】(longue)

  • une longue journée(長くて〇〇な1日)
  • une journée longue(長い1日)

【男性形複数】(longs)

  • de longs cheveux(長くて〇〇な髪)
  • des cheveux longs(長い髪)

【女性形複数】(longues)

  • de longues heures(長くて〇〇な時間)
  • des heures longues(長時間)

同じタイプの他の形容詞

名詞の前についてニュアンスなどが変わる形容詞は、他にもあります。

このシリーズですでにご紹介しているものには、次のモノがあります。

  • 第289回「nouveau(新しい)」「grand(大きい)」
  • 第332回「unique(唯一の/独特な)」 

この記事を音声で聞くなら 

シリーズ【フランス語版 星の王子さまのフレーズ】は、ポッドキャストでも配信しています。 

下のリンクのクリックでこの記事に該当するエピソードに飛びますので、発音の確認などにお使いくださいね!

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