形容詞の語順
今回のフレーズにある「nouveau」は「新しい」という意味で、ごく基本的な単語の1つです。
多くの形容詞とは違って名詞の前につくことが多いのですが、このフレーズでは名詞の後ろについています。
それはなぜなのか、どう意味が変わるのかなどについてご紹介します。
『星の王子さま』をフランス語で読む楽しさも味わってみてください!
このフレーズの場所と背景
では、単語に入る前に、今回のフレーズ「J’ai appris ce détail nouveau, le quatrième jour au matin, quand tu m’as dit :」の場所と背景を確認しておきます。
このフレーズは、第6章の始めにあります。
第6章の最初の段落にあるフレーズで、語り手の男性の説明です。
「j’ai appris」
「j’ai」は「わたし」を意味する「je」の省略形「j’」と「avoir」の活用形(現在形)の「ai」が合わさったものです。
「appris」は「apprendre」の過去分詞です。
「(聞いたり読んだりして)~を知る」「(外国語・技術などを)学ぶ/習う」などの意味です。
「ai(avoir)+(動詞の過去分詞)」なので、過去を表す表現です。
「ce détail nouveau」
「ce」は次に名詞が来ると「この(その・あの)」という意味になります。
「détail」は男性名詞で「詳細」や「細部」などとという意味です。
「nouveau」は「新しい」を意味する形容詞です。
「le quatrième jour au matin」
「le」は定冠詞単数男性形、「quatrième」は「第4の」「4番目の」、「jour」は男性名詞で「1日」「曜日」「昼間」といった意味です。
「au」は前置詞の「à」と定冠詞単数男性形「le」が合わさったもの、「matin」は「朝」を意味する男性名詞です。
「quand tu m’as dit」
ここでの「quand」は疑問詞「いつ」ではなく、接続詞の「~する時に」「~するたびに」という意味です。
「tu」は「きみ」、「m’as」は1人称代名詞単数目的格「わたしを」「わたしに」という意味の「me」の省略形「m’」に、「avoir」の活用形(現在形)「as」が合わさったものです。
「dit」は「言う」という意味の「dire」の過去分詞です。
背景を見てみると
王子さまが羊の絵をねだったのは、王子さまの星の厄介者であるバオバブを食べてもらうためでしたが、その一方で王子さまは、星での暮らしについても話すようになりました。
男性は、王子さまの唯一の気晴らしは日没を眺めることだったことに気づいたのですが、それは今回のフレーズに続く、王子さまとのやり取りがあったからでした。
フレーズ全体の意味
形容詞の語順を考える前に、このフレーズの全体の意味を確認しておきます。
フランス語の区切りごと、そして順番通りに、また、あえてストレートに意味を拾ってみます。
「J’ai appris ce détail nouveau」で、「わたしはこの新しい詳細を知った」。
「le quatrième jour au matin」で、「4日目の朝に」。
「quand tu m’as dit :」で、「きみがわたしに言った時に:」。
なお、ここで「détail(詳細)」と言われているのは、王子さまの実際の話しの内容ということだと思われます。
「4日目の朝」
背景から、王子さまは語り手の男性に、それまでも自分の星のことを話していたことがわかります。
ただしある時からは、別の局面を迎えたことが示唆されています。
それは「4日目の朝」でした。
そして、今回のフレーズは「:(コロン)」で終わっています。
というのも、この後には王子さまと男性の実際の会話が続くからです。
詳細とは?
ではこれらのことを踏まえて、「nouveau(新しい)」という形容詞の語順について考えます。
先にお断りしておきますが、「nouveau(新しい)」を名詞の後にしているのには理由があるものの、本当にごくわずかなニュアンスです。
語順が変わったからといって、「新しい」という意味が変わるわけではありません。
そしてもちろん名詞の部分、つまり「détail(詳細)」が王子さまの話しであることにも変わりはありません。
あえて変えている?
とすると、この語順の違いは何を意味するのでしょうか?
冒頭で触れた通り、「nouveau(新しい)」という形容詞は他の多くの形容詞と違い、名詞の前につくのが普通です。
つまり、今回のフレーズでは「détail nouveau」になっていますが、「nouveau détail」の方が多く使われているということです。
意味の違い
ここでは「détail(詳細)」が王子さまの話しなので、「詳細」を「話し」として考えます。
すると、
- 「nouveau détail」は新たに追加された話しであることを強調
- 「détail nouveau」は他とは違う新しい話しであることを強調
という違いがあります。
要するに、「nouveau(新しい)」という形容詞を後ろに置くことで、「新しく追加された」というよりも、「他とは違う」ということを言いたかったようです。
その他の例
…できるだけわかりやすく、を心がけてご紹介したつもりなのですが、やっぱりわかりにくいかもしれませんね。
名詞の前につく形容詞には、この「nouveau(新しい)」以外にもいくつかあるので、もっとわかりやすい例も挙げておきます。
「大きい」というのが代表的な意味の「grand」です。
- 名詞の前:un grand homme「偉大な人」:業績や重要性を強調
- 名詞の後:un homme grand「背の高い人」:物理的な大きさを指す
高度な文学作品
どちらも「大きい」ことに変わりはありませんが、かなり意味が変わりますよね?
形容詞によってはあまりニュアンスが変わらないものもあるのですが、使われている単語がまったく同じなのに、語順だけで意味が変わるというのが、フランス語のおもしろさでもあります。
それにしても『星の王子さま』という作品、子ども向けと言われてはいますが、やはり高度な文学作品ですよね!
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シリーズ【フランス語版 星の王子さまのフレーズ】は、ポッドキャストでも配信しています。
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