364 形式上の主語やイメージの扱い方に慣れよう! Il paraît que c’est tellement beau.

名詞

フランス語の考え方を知ろう! 

今回のフレーズには形式上の主語が含まれているのですが、日本人にとっては誤解しやすいかもしれません。 

またフランス語では性や数の情報が形容詞の変化にも影響しますが、それが反映されない場合もあります。 

日本語とかなり異なる考え方について、ご紹介します。 

このフレーズの場所と背景 

では、単語に入る前に、今回のフレーズ「Il paraît que c’est tellement beau.」の場所と背景を確認しておきます。 

このフレーズは第9章後半の会話部分にある、バラの花のセリフです。 

「il paraît que」 

「il」は形式上の主語で意味を持たない使い方、「paraît」は「現れる」「~に見える」などの意味の動詞「paraître」の活用形(現在形)です。 

「il paraît que +(直接法)」で「~であるらしい」「~だそうだ」という意味です。 

「c’est tellement beau」 

「c’est」は、「これ(それ・あれ)」を意味する「ce」と「être」 の活用形(現在形)「est」が合わさってできています。 

「tellement」は「それほどまでに」ですが、強調の「実に」「本当に」という意味もあります。 

「beau」は形容詞で、人の容姿や景色などが「美しい」、人の才能やモノ・コトが「すばらしい」という意味です。 

姓・数・発音によって形が変わりますが、ここでは基本形の単数男性形です。 

その他の形は、このシリーズの第145回でまとめていますので、参照してください。 

背景を見てみると 

旅立ちの朝、王子さまはバラの花に別れを告げました。 

わがままで見栄っ張りなバラの花は、時にはウソをついて自分のことを大きく見せようとしたりしていましたが、急に自分の気持ちを打ち明けて謝罪までします。 

王子さまは、バラの花が大嫌いだと言っていた風に加え、虫が来ることも心配するのですが、それまでと打って変わって、花は虫さえも我慢すると言います。 

その理由が今回のフレーズです。 

このフレーズの意味 

今回は、まずこのフレーズの意味を考えていきます。 

「il paraît que ~」で「~であるらしい/~だそうだ」、「c’est tellement beau」で「それは本当に美しい」です。 

なので「それは本当に美しいらしい」ということなのですが、「それ」とは、このフレーズの直前にある内容から、「チョウ」を指しています。 

つまりバラの花は、「(私はまだ見たことがないが、チョウは)本当に美しいらしい」と言っているのです。 

形式上の主語 

さて、ここで冒頭でも触れた「形式上の主語」について考えます。 

先述したように、「il」が形式上の主語なのですが、これはあくまでも「形式上」なので、主語ではあっても、意味はありません。 

そのため、「il paraît que ~」の部分が「~であるらしい/~だそうだ」という意味になり、和訳すると主語が消えてしまいます。 

フランス語で主語が省略されることはとても珍しく、省略する代わりに形式上の主語を置くことがほとんどです。 

日本語はかなり大胆に主語を省略する言語なので、この点は対照的です。 

ただしこの「il」も、一応は主語なので、これに続く動詞「paraît」は「il」に一致させて、3人称単数の活用形ではあります。 

複数を受けているのに? 

なお、このフレーズの後半「c’est tellement beau(それは本当に美しい)」の「それ」が、「チョウ」を指していることも、先ほど触れました。 

この直前のフレーズとは、このシリーズの第363回で扱った「Il faut bien que je supporte deux ou trois chenilles si je veux connaître les papillons.(もしもチョウを知りたいなら、私は毛虫の2匹や3匹を我慢しなければならない)」です。 

このフレーズの「チョウ」は「les papillons」という複数形です。 

でも今回のフレーズで「c’est(それ)」と単数で扱われているのは、なぜでしょうか? 

「personne」について

「papillon(チョウ)」は男性名詞ですが、複数形なので、今回のフレーズをこれに一致させるなら、「c’est tellement beau」という単数男性形にはならないはずです。 

(「beau(美しい)」という形容詞は、前述通り性や数で変わるので、変化していればすぐにわかります) 

ここで単数形にしているのは、話し手が美しさや魅力の印象を「全体として」表現しているためです。 

「les papillons」のように対象が複数でも、全体的な美しさや素晴らしさのイメージとして単数形の形容詞が使われているのです。 

「形式上の主語」「印象を全体として表現」するなど、慣れるしかないのですが、少しずつ身につけていきましょう! 

この記事を音声で聞くなら 

シリーズ【フランス語版 星の王子さまのフレーズ】は、ポッドキャストでも配信しています。 

下のリンクのクリックでこの記事に該当するエピソードに飛びますので、発音の確認などにお使いくださいね!

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