特殊な動詞「perdre」
昨日の配信(2025年1月9日)で、「~てしまった」「~ちゃった」のフランス語での言い方をご紹介しました。
その中に「迷っちゃった」という例文もあったのですが、使用した動詞「perdre」には本来、「迷う」という意味はありません。
なぜ、そしてどのような場合に「失う」が「迷う」に変化するのかをご紹介します。
現在の「失う/負ける」
動詞「perdre」には「失う」「負ける」などの意味があります。
目的語がつけば「失う」、目的語がなければ「負ける」になります。
- Je perds mon temps.
(時間を失う→ムダにする) - Je perds.
(負ける)
過去の「失う/負ける」
過去のことを表すには「avoir +(過去分詞)」を使います。
「perdre」の過去分詞は「perdu」です。
現在形同様、目的語がつけば「失う」、目的語がなければ「負ける」になります。
- J’ai perdu mes cheveux.
(髪の毛を失った→抜けた) - J’ai perdu.
(負けた)
未来の「失う/負ける」
未来のことを表すには「aller +(動詞の原形)」を使います。
未来形でも、目的語がつけば「失う」、目的語がなければ「負ける」になります。
- Je vais perdre mes amis.
(友だちを失うだろう) - Je vais perdre.
(負けるだろう)
現在の「迷う」
これまでの「perdre」は「失う」「負ける」という意味でしたが、代名動詞「se perdre」を使ったり、過去分詞の「perdu」を形容詞として使うことにより、「迷う」という意味になります。
- Je me perds.
(迷う/自分を見失う) - Je suis perdu(e).
(迷っている)
2つの違いは?
この2つは、感覚的に違いがわかるようになるには慣れが必要かもしれません。
1つ目の「Je me perds.」の方は、方向や自分自身の位置がわからなくなる瞬間を表現しています。
2つ目の「Je suis perdu.」または「Je suis perdue.」の方は現在の状態を言っていて、途方に暮れたり、道に迷っている状況を表しています。
(e)の理由
なお(e)と表記しているのは、「je(わたし)」が女性の場合は「Je suis perdue.」のように、「perdu」の語尾に「e」がつくからです。
ちなみに、過去分詞の語尾に「e」がつくのは、「être +(過去分詞)」の時です。
過去表現で使う「avoir +(過去分詞)」なら、女性の場合でも語尾に「e」がつくことはありません。
なぜ変化する?
代名動詞「se perdre」の「se」の部分は再帰代名詞と呼ばれ、主語によって変化しますが、主語に関わらず「自分」と捉えられます。
「se perdre」は「自分を失う」という意味なのですが、これは「方向感覚や位置がわからなくなる」、つまり「道に迷う」や「迷子になる」ことへとつながる表現です。
そして「Je suis perdu(e)」というと、直訳は「私は失われた状態にある」となりますが、これが「私は迷っている」「私はどうしていいかわからない」という意味に自然に転じます。
この「失う」という動詞が、「迷う」という状況や感覚に転じるところがフランス語の面白いところですね。
過去と未来の「迷う」
昨日ご紹介した「~てしまった」「~ちゃった」の言い方は、代名動詞「se perdre」の過去表現「être +(過去分詞)」を使う方法でした。
未来のことを表すには、代名動詞「se perdre」を「aller +(動詞の原形)」の形で使います。
- Je me suis perdu(e).
(迷っちゃった) - Je vais me perdre.
(迷うだろう)
再帰代名詞「se」、ここでは主語が「je(わたし)」なので「me」ですが、過去の場合と未来の場合では語順が違うので、注意してください。
まとめ
「perdre」が「負ける」になる場合、「迷う」になる場合をまとめます。
- Je perds. 負ける(現在)
- Je me perds. 迷う(現在)
- J’ai perdu. 負けた(過去)
- Je suis perdu(e). 迷っている(現在)
- Je me suis perdu(e). 迷っちゃった(過去)
- Je vais perdre. 負けるだろう(未来)
- Je vais me perdre. 迷うだろう(未来)
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