それぞれに別の名前が…
フランス語の動物の名前は、本当にややこしいです。
同じ動物なのに、オス・メス・子どもでまったく違う名前になることがあります。
その理由が気になって各々の語源を調べてみると、フランス語の古い歴史が見えてきました。
ヤギが例外すぎる!
フランス語の動物の名前のうち、ネコはオスが基本形の「chat」で、メスは「chatte」、子どもは「chaton」となり、規則的な変化です。
ところが、ウマは基本形のオスが「cheval」、メスは「jument」、子どもは「poulain」と、まったく別の名前です。
ヤギに至っては、例外的にメスが基本形の「chèvre」、オスは「bouc」、子どもにはさらに2種類の名前があり、「chevreau」と「cabri」です。
子ヤギの2種類が違いすぎる!
この子ヤギの2種類の名前「chevreau」と「cabri」があまりにも違うので、ある日、調べてみることにしました。
「chevreau」については、メスで基本形の「chèvre」から変化したと理解できるのですが、「cabri」は、基本形の「chèvre」に似ていません。
調べた結果、「chèvre(メス / 総称)」「chevreau(子ども)」「cabri(子ども)」の3つは語源がラテン語だということは共通しているが、「cabri」だけはラテン語→プロヴァンス語→フランス語という変遷をたどったということがわかりました。
確かに「cabri」は南フランスでよく使われる言葉なので、プロヴァンス語を経由していたということに納得がいきました。
オスはやはり仲間外れ
ところが、オスの「bouc」だけが仲間外れだということも、わかったのです。
2026年5月15日配信の【動物のフランス語】⑭ヤギで触れているので、重複を避けるためにも詳細はそちらに譲りますが、フランス語のオスのヤギ「bouc」は、かなりかわいそうな存在です。
確かにヤギはオスとメスでかなり印象が変わる動物で、人間の役に立つのは主にメスです。
そのためか、オスの「bouc」は、多くのフランス語のルーツとなったラテン語由来ではありません。
ケルト語またはゲルマン語由来で、ラテン語とは、似ても似つかない言葉になったわけです。
根底になったケルト語
話しは変わりますが、フランス人は自分たちのことを「Nos ancêtres les Gaulois(我らが先祖ガリア人)」 と言うことがあります。
現在のフランスの場所に紀元前から住んでいる、ガリア人が自分たちの先祖だと主張するのです。
もちろん今のフランスは多民族国家なのですが、アイデンティティとしてのガリア人を誇りに思っています。
そのガリア人の言語が、ケルト語でした。
骨格になったラテン語
そして紀元前1世紀になると、カエサル(シーザー)が率いるローマ軍がやって来て、ガリアは征服されてしまいます。
ガリア人は追い出されたりせずに留まりましたが、ごく一部の単語以外は、ローマという新しい支配者の言語であったラテン語が使われるようになりました。
現在のフランス語の80%は、このラテン語に由来すると言われています。
スパイスになったゲルマン語
ただし5世紀には、大国であったローマが弱体化し、北からゲルマン人がやって来ます。
ゲルマン語を話していたゲルマン人が新しい支配者になったのですが、彼らはラテン語を話すようになりました。
でもゲルマン語の影響は残り続けたので、一部の単語や発音の仕方などがラテン語とは異なります。
ヤギは古いフランス語の縮図?
この3つの言語がフランス語の元を作り、そこからいくつかの変遷を経て現代フランス語になりました。
前述通り、「chèvre(メス / 総称)」「chevreau(子ども)」「cabri(子ども)」の3つは語源がラテン語です。
そしてこれも前述しましたが、「bouc(オス)」はケルト語またはゲルマン語由来であると言われています。
ヤギという1種類の動物に4つの名前があるわけですが、そのうちの3つがラテン語、残りはケルト語またはゲルマン語由来というのは、まるでフランス語の古い歴史を物語っているかのようです。

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