それぞれに別の名前が…
フランス語の動物の名前は、本当にややこしいです。
多くの動物で基本になるのはオスの名前ですが、その動物のメスが女性形になるだけのこともあれば、まったく別の名前になることがあります。
そして同じ動物の子どもにも、さらに別の名前が存在します。
つまり1種類の動物なのに、3つの別の名前をすべて覚えなければならないのがフランス語なのです。
そこで、この負担を少しでも軽くしようと考え、できるだけイメージしやすく、会話の中で使われることが多いフレーズで、基本形のオス・メス・子どもの名前を、動物ごとにご紹介します。
その第14回目は、ヤギです。
フランス語のヤギ
まず、ヤギの3種類の名前をご紹介します。
- un bouc(オス)
- une chèvre(メス/総称)
- un chevreau / un cabri(子ども)
ヤギはメスで総称の「chèvre」で語られることが多い動物です。
オスは全く異なる形の「bouc」です。
子どもには2種類の名前「chevreau」と「cabri」があり、オス・メスにかかわらず、男性名詞になります。
いろいろなヤギ
ヤギが登場する例文を挙げておきます。
- Ouh là là, tu sens le bouc ! File sous la douche !
(うわぁ、すっごく臭うよ!早くシャワー浴びて!)
- Le patron essaie de ménager la chèvre et le chou entre les clients et ses employés.
(社長は顧客と従業員の両方の顔を立てようと苦心している)
- Les enfants font des cabrioles sur le canapé depuis ce matin.
(子どもたちは今朝からソファの上でピョンピョン跳ね回っている)
などがあります。
ヤギはいないが…
例文1「sentir le bouc(ひどく臭う)」は、直訳すると「ヤギの臭いがする」になります。
フランス語のオスヤギは「イヤな臭い」「(本能的な)不快感」を表すので、「ヤギの臭い」がひどい臭いという意味になるのです。
ちなみに、この「Tu sens le bouc !(すっごく臭うよ!)」という言い方は、よほど親密な間柄でない限りは言えないフレーズです。
この例文は、運動後に帰宅した高校生の兄に向って、まったく遠慮のない中学生の妹が言いそうなフレーズを想定しています。
例文2の「ménager la chèvre et le chou(両方の顔を立てる / 妥協点を見つける)」という言い方は、直訳すると「ヤギとキャベツの両方を手なずける」です。
これはヤギにキャベツを食べられないようにしつつ、両方をうまく守るという難しさから来ている表現です。
例文3の「faire des cabrioles(とんぼ返りをする / 跳ね回る)」は、「cabri(子ヤギ)」がピョンピョン跳ねる動きから来ています。
どれも和訳すると、ヤギが消えていますね。
かわいそうなパパ
ところで、多くの動物の総称がオスなのに、ヤギはメスの「chèvre」で語られることが多いのには、フランスが昔から酪農が盛んであるということが関係しています。
ヤギはミルクを取り、そのミルクからチーズを作るために飼う動物なので、圧倒的に必要なのはメスなのです。
そのため「ヤギ=ミルクをくれるメスの動物」という認識が定着して、女性形が総称となりました。
また、例文1「sentir le bouc(ひどく臭う)」の直訳が「ヤギの臭いがする」だと前述したとおり、オスのヤギはフェロモンが強くてかなり臭いそうです。
それに加え、繁殖期のオスはかなり攻撃的だそうで、角を突きつけて突進してくるという、おとなしいヤギのイメージとは真逆らしいのです。
そのせいか、中世のキリスト教絵画などでは、悪魔(サタン)はオスのヤギの角や脚で描かれています。
ヤギのパパは、人間にとってほぼ不要なので無視され、人間が勝手に作ったイメージがそのキャラクターに合わず、メスにアピールするための体臭も人間の好みには合わず、さらには悪魔扱いまで受けるという、かなりかわいそうな存在です。
頭のいいママ
それに対し、メスの「chèvre」には、社会生活における「知恵」や「対人関係」を代弁させる傾向があります。
どこまでも人間の都合ですが、メスはミルクをくれるありがたい存在なので、何でも見境なく食べてしまう性質さえも問題視されることはありません。
子ヤギの2つの名前の違いについて
そして2種類の名前がある子ヤギについては、日常会話で「あそこに子ヤギがいる」と言う分にはどちらを使っても間違いではありません。
ただし「元気いっぱいに跳ねている子」なら「cabri」を使うことが多く、「(種としての)子ヤギ」なら「chevreau」を使うといった違いがあります。
なお、子ヤギの肉は食用に、皮は皮革製品として使われます。
こうした食肉や皮革の文脈で使われるのは「chevreau」の方です。
子ヤギにはピョンピョンと跳ね回る元気なイメージがあり、その文脈では必ずと言っていいほど「cabri」が使われます。
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