万能な「Je sais pas.」?
フランスの子どもは、何かにつけてすぐに「Je sais pas.」と言います。
そしてそれは子どもに限らず、大人になってもちょっと返事に困ったときなどにすぐ、「Je sais pas.」というフレーズが返ってくるのです。
具体的な例文とともにご紹介します。
「知る」と「理解する」
前回の配信「【フランス語のフレーズ】「わからない」はフランス語でどう言う?」で、フランス語の「知らない」と「わからない」は区別されない場合が多いとご紹介しました。
否定表現になると「savoir(知る/知っている)」と「comprendre(理解する/わかる)」の使い分けがされなくなってしまうという内容です。
ほとんどの場合、「知らない」「わからない」の両方を、1つのフレーズで済ませてしまうのです。
- Je ne sais pas.
(知らない/わからない)
そして親しい間柄の場合は、否定の「ne」を省略した
- Je sais pas.
(知らない/わからない)
がよく使われます。
「わからない」だけではない!
ただしこの「Je sais pas.」は、「savoir(知る/知っている)」と「comprendre(理解する/わかる)」の否定表現だけにはとどまりません。
次のような質問の答えが否定である場合にも、「Je sais pas.」で答える人が多いのです。
- Pourquoi il a fait ça ?
(なぜ彼はそんなことをしたの?) - Tu connais ce mot ?
(この単語知ってる?) - Tu te souviens ?
(覚えてる?) - T’en penses quoi ?
(どう思う?)
以上のフレーズの答えが否定表現なら、本来の回答は
- Je ne comprends pas pourquoi.
(どうしてかわからない) - Je ne connais pas.
(知らない) - Je ne me souviens pas.
(覚えてない) - Je ne sais pas quoi en penser.
(どうも思わない)
ということになりそうですが、すべて「Je sais pas.」で答えるのが普通なのです。
なぜ「Je sais pas.」で済ます?
では、なぜこうした返事が可能になっているのかというと、そのカギになっているのは「savoir(知る/知っている)」という動詞です。
「savoir」は広い意味で「頭でわかっている」こと全般を含むため、否定形「Je (ne) sais pas.」になると、「理解していない・知らない・記憶していない・判断できない」などをまるっと含んでしまえる便利な表現になるのです。
また、話し言葉の「Je (ne) comprends pas.」や「Je (ne) connais pas.」は、ともすると堅苦しくなったり、限定的に聞こえるため、それを避ける意味でも「Je (ne) sais pas.」が代わりに使われるという一面もあります。
つまり「Je (ne) sais pas」には、
- やさしく、表現をあいまいにする
- 責任を避けつつ、会話をスムーズにする
- 場の空気を和らげる
といった効果があるため、大人も子どもも積極的に使いたがるのです。
フランス語入門期なら要注意!
ただし…、これはフランス語ネイティブや、外国人であってもフランス語に慣れた人たちのお話し。
リズムもよく、ふわっと流せる気軽さから、「Je (ne) sais pas.」は本当によく使われる表現ですが、たとえ周囲のフランス人が繰り返し言っていても、フランス語を始めたばかりの外国人なら、あまり気軽に使わないほうがいいかもしれません。
詳細は前回の配信「【フランス語のフレーズ】「わからない」はフランス語でどう言う?」で触れていますが、やはり入門期なら、少し堅苦しい程度の表現を間違えずに使えるようになってから、少しずつ様子を見ながら周りのマネをしていくほうが賢明です。
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