意味の広がりや違いを感じよう!
日本で広く使われている外来語には、フランス語由来のものが少なくありません。
外来語があることでフランス語の単語が覚えやすくなる反面、本来の意味が抜け落ちたり、変わってしまうことすらあります。
外来語・元の単語の両方を知って、意味の広がりや違いを感じてください。
第37回目は、「ポエム」です。
日本語の「ポエム」
日本語の「ポエム」はフランス語由来の外来語です。
「ポエム」は、必ずしも文学的ジャンルを指しません。
叙情的・感傷的・印象的・ロマンチックであるなど、詩的ではあるものの、詩の形式ではない文章を指すことが多いです。
また「ポエム」自体は名詞でありながら、「ポエムのよう」「ポエムっぽい」のように、形容詞的に使われることがあります。
- ポエム①「詩的だが、詩の形式ではない文章」
- ポエム②「詩的であるという形容詞的表現」
フランス語の「poème」
それに対し、フランス語の「poème」 は明確なジャンルを指します。
あくまでも文学作品の一種であり、詩的リズムや構造、韻・行分け・リズムなどの形式を伴います。
「poème」は「poète(詩人)」が書くもので、小説や随筆などとは区別されます。
つまり「poème」は、「詩」というカテゴリーとして独立した存在です。
フランス語の「poème」の使い方をまとめると、
- poème「(文学ジャンルとしての)詩」
ということになります。
いろいろな「poème」
「poème」の例文を挙げておきます。
- J’ai écrit un poème.
(詩を書いた)
- Le haïku est un poème très court.
(俳句はとても短い詩である)
などがあります。
俳句と短歌
例文にある通り、俳句は日本の詩として認識されています。
5・7・5という形式があり、とても短いということが印象的であるせいか、短歌よりもずっと広く知られています。
「俳句」はフランス語では男性名詞で、「haïku」と表記されます。
フランス語では「H」が発音されないので「haïku」でも発音がかなり違うのですが、ローマ字表記の「haiku」にしてしまうと、「ai」の部分が一緒に発音されるので、俳句からは程遠い音になってしまうからです。
なお短歌は女性名詞で、ローマ字表記そのままの「tanka」です。
意味が広がった理由
このシリーズ「意味が狭まった外来語」では、フランス語由来の外来語が、元の単語が持つ、たくさんある意味のごく一部だけを拝借していたり、あるいは元の単語とは違う意味になってしまった例などを多くご紹介してきました。
でも今回の「ポエム」に関しては、元のフランス語である「poème」よりも意味が広がっています。
その理由は、日本では「ポエム」が広告・キャッチコピー・SNS・日常的な会話などで「詩のよう」「詩的」といった雰囲気を表す言葉として使われるようになり、本来の形式性よりも雰囲気・感情に注目して使われ続けたためです。
「ポエムっぽい」をどう言う?
では、日本語の「ポエムっぽい」をフランス語で言いたい場合はどうしたらいいのでしょうか?
前述通り、フランス語の「poème」 は明確なジャンルを指します。
そのため、「ポエムっぽい」をそのまま「comme un poème」にしてしまうと、「(文学作品である)詩のように」という重々しい表現になりがちです。
これでは、ふんわりした感傷や雰囲気、ポエムっぽい甘さなどは表れません。
なので、各々の場面に応じて他の形容詞を使い分けることになります。
日本語の「ポエムっぽい」に相当するのは
- sentimental:感傷的
- lyrique:感情が盛り上がっている
- romanesque:ロマンチック・夢見がち
などではないかと思われます。

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