フランス語で感じよう!
今回のフレーズは王様のセリフですが、この王様はとても心優しい人です。
和訳すると同じ表現になってしまうものの、フランス語だとそれが実感できます。
王様のやさしさを、ぜひフランス語で感じてみてください!
このフレーズの場所と背景
では、単語に入る前に、今回のフレーズ、「Allons ! bâille encore.」の場所と背景を確認しておきます。
このフレーズは、第10章の前半にある王様のセリフです。
「allons ! bâille encore」
「allons」は「行く」という意味の「aller」の命令形、「bâille」は「あくびをする」という意味の「bâiller」の命令形です。
「encore」は、「まだ」「相変わらず」「また」「もっと」などを意味します。
背景を見てみると
旅に出た王子さまが最初にやって来たのは、年老いた王様が1人で暮らす小さな星でした。
王子さまを見つけた王様は「家来がやって来た」とばかり、大喜びです。
でも長旅で疲れているのに、座る場所すらない王子さまは、王様の前であくびをしてしまいます。
すると王様は、礼儀に反すると王子さまをたしなめ、あくびを禁止すると言います。
それに対して、王子さまは我慢できないと反論するのですが、「家来」に反論された王様はすぐに禁止したあくびを許します。
そして許すだけではなく、人があくびをするのを見たくなったらしく、今回のフレーズを言うのです。
3種類の命令形
前述通り、今回のフレーズには「allons」と「bâille」という、2つの命令形が使われています。
もちろん元の動詞は違いますが、それだけではなく、命令形の種類も異なります。
フランス語の命令形には3種類あるのですが、そのうちの2種類が使われているということです。
このシリーズの第282回で2種類の命令形を扱っているのですが、その中では「主語がない」こと、プラス「2人称の現在形」という2つの要素がカギになるとご紹介しています。
そして第3の命令形は第291回で扱っており、「主語がない」こと、プラス「1人称複数の現在形」という要素がカギです。
「allons」と「bâille」の形状
今回のフレーズの「allons」はこの3種類のうちの第3の命令形で、「1人称複数の現在形」の形をしています。
「bâille」は「2人称の現在形」のうちの1つで、2人称単数つまり「tu(君)」の現在形とほぼ同じです。
「ほぼ同じ」というのは、現在形から語尾の「s」を取った形だからです。
命令形「allons」と「bâille」の形をまとめると、次のようになります。
- Nous allons à l’école.
(わたしたちは学校に行く)
- Tu bâilles.
(君はあくびをする)
→ 現在形「bâilles」から語尾の「s」を取った「bâille」
「allons」の意味
ところが「allons」には、「行く」や命令形の「行け」という意味はありません。
第3の命令形は「命令形」と呼ばれてはいますが、「~ましょう」という意味の勧誘表現なので、通常の「allons」なら、「行きましょう」という意味になります。
でも今回のフレーズの「allons」はさらに特殊で、「間投詞的な用法」と呼ばれる使い方です。
これは「aller(行く)」の命令形3種類に共通する使い方で、和訳するとすべて「ほら!」「さあ!」などになるものです。
なので今回のフレーズの「allons」も、和訳すれば「ほら!」「さあ!」になります。
「allons」以外の2種類
ちなみに、「aller(行く)」の命令形には「allons」以外にも「va」と「allez」があります。
前述通り「allons」は1人称複数の現在形、「va」と「allez」は2人称複数の現在形に基づく命令形です。
そのため「allons」は「行きましょう」、「va」は「行け」「行って」、「allez」は「行ってください」というのが基本的な意味です。
特殊な「allons」
ところが間投詞的な用法では、和訳すると「allons」「va」「allez」がすべて「ほら!」「さあ!」になります。
- Allons, calme-toi.
(さあ、落ち着いて)
- Va, je te fais confiance.
(ほら、君を信じてるよ)
- Allez, dépêche-toi !
(さあ、急いで!)
特殊な「allons」とその他の違い
和訳するとすべて「ほら!」「さあ!」になるものの、実は「allons」と「va」や「allez」には違いがあります。
元の命令形の意味「allons(行きましょう)」と、「va(行け/行って)」「allez(行ってください)」という違いが、間投詞的な用法になっても影響しているのです。
そもそも「allons(行きましょう)」という言い方は、命令というよりは勧誘なので、他の2つとは異なるのです。
心優しい王様
今回のフレーズは、王様が「Allons ! bâille encore.」と言っています。
和訳すれば「さあ!もっとあくびをしなさい」になるのですが、この王様はずっと1人ぼっちだったので、単に命令というものをしたいだけです。
それが表れているのが「Allons !」であり、前述通り「allons(行きましょう)」という勧誘が本来の使い方なので、同じ「さあ!」でも、そしてさらに「bâille」という命令形が使われていても、やわらかく聞こえるのです。
せっかくやって来た「家来」のご機嫌をうかがっているのは、心優しい王様の方ですよね!
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シリーズ【フランス語版 星の王子さまのフレーズ】は、ポッドキャストでも配信しています。
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