2種類の南フランス
先日(2024年7月18日)公開した【フランス語版 星の王子さまのフレーズ】第298回で、「midi」という名詞をご紹介しました。
その中での「midi」の意味は「正午」だったのですが、この単語には「南」という意味もあります。
そして、少し表記を変えることによってフランスの地方を表すこともあるのですが、いわゆる「南仏」とは違い、少し限定された意味合いを持つことになります。
地方名としての表記
この表記の変え方というのは、「le Midi」にするということです。
「正午」という時間を表す時には「Il est midi.」のように、冠詞をつけずに小文字だけで表記します。
でも地方名として表記するときには、必ず定冠詞の「le」がつき、「Midi」と頭文字を大文字にするのです。
独特のイメージ
でもたったこれだけのことで、フランスの限定された場所を表すことになります。
冒頭でも触れた通り、「midi」には「正午」の他に「南」という意味もありますが、ただ単にフランスの南部というわけではありません。
場所が限定され、独特の文化や歴史的背景が強調されることによって、イメージが加わるのです。
その象徴になっているのが、「la mer Méditerranée(地中海)」です。
「le Midi」とは主に地中海沿岸地方を指しています。
割と最近では、「地中海ダイエット」などで有名になった食文化がありますが、古くはローマ帝国時代にさかのぼる歴史も大いに影響しています。
「南仏」との違い
ここで、「le Midi」と「le sud de la France(南仏)」の違いについて考えてみます。
「le sud de la France(南仏)」は文字通り、フランス南部のことなので、フランスの南側すべてと言ってよく、東側はイタリアとの国境から、西側はスペインとの国境まで、と考えられます。
では「le Midi」は、と言うと、「le sud de la France(南仏)」に含まれながらも確実に「le Midi」に入らない場所があります。
それは大西洋側の地域で、「Bayonne(バイヨンヌ)」や「Pau(ポー)」「Bordeaux(ボルドー)」などです。
「Vous avez l’accent du Midi.」
「le Midi」や「le sud de la France(南仏)」という言い方は、日本の「関東」「近畿」「東北」などの地方として、学校で習うわけではありません。
それでも初対面の人と話す時などに、「Vous avez l’accent du Midi.」のように言ったりします。
「南のイントネーション(なまり)で話しますね」ということなのですが、そのように言った後に「ご出身は?」と続くのがお決まりです。
この場合、「Vous avez l’accent du sud.」と言うことはあまりなく、「Vous avez l’accent du Midi.」になることがほとんどです。
太陽もポイント
これは「la Provence(プロヴァンス)」のイントネーション(なまり)が他の地方に比べて独特だということが大いに影響してはいます。
ただしそれだけではありません。
1年じゅう日差しに恵まれていて、オリーブオイルを使ったり、いろいろな種類の果物を食べたりする食生活はもちろん、その他の生活スタイルや、人との関わり方なども含めたイメージが、「le Midi」という言葉の中に詰め込まれているのです。
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