語いを簡単に増やそう!
今回のフレーズには、わかりやすい形で対義語(反対語)になっている名詞があります。
一緒に覚えることで語いを増やせますし、男性名詞か女性名詞かを考えずにすみます。
同じつくりの他の例もご紹介します!
このフレーズの場所と背景
では、単語に入る前に、今回のフレーズ、「Je ne tolère pas l’indiscipline.」の場所と背景を確認しておきます。
このフレーズは、第10章の中ほどにある王様のセリフです。
「je ne tolère pas l’indiscipline」
「je」は「わたし」、「ne ~ pas」で「~ない」、「tolère」は(事柄を)「大目に見る」「許容する」(人・苦痛などを)「我慢する」などという意味の「tolérer」の活用形(現在形)です。
なお「tolérer」は語尾が「-er」で終わっているので、規則的な変化をする「ER動詞」に見えますが、実は少しだけ特殊な変化をするので、私は個人的に「ひねくれ者ER」と呼んでいます。
「l’indiscipline」は定冠詞単数形「le」または「la」の省略形「l’」と「無規律」「無秩序」という意味の女性名詞「indiscipline」が合わさったものです。
背景を見てみると
旅に出た王子さまが最初にやって来たのは、年老いた王様が1人で暮らす小さな星でした。
王子さまを見つけた王様は「家来がやって来た」とばかり、大喜びです。
でも長旅で疲れていた王子さまは、王様の前であくびをして王様にたしなめられます。
すると王子さまは我慢できないと反論するのですが、このことをきっかけに、王子さまは王様が誰かに命令したり指示したりすること自体が嬉しいということを知ります。
何にでも自分の命令が通用すると思っている王様は、星が命令に従うのかどうかを王子さまに質問されて「すぐに従う」と答えます。
今回のフレーズは、王様がそれに続けた部分です。
「ひねくれ者ER」とは?
まず、「tolérer(~を大目に見る/許容する/我慢する)」の特殊な活用について。
前述通り、語尾が「-er」になっているのですが、残念ながら特殊な動詞なので、このシリーズの第197回などで扱っている「ER動詞」とは違う活用をします。
こうした動詞を、私は勝手に「ひねくれ者ER」と呼んで第216回などでご紹介しています。
特殊な変化の仕方や対応などについて触れていますので、よろしければ参照してください。
「tolérer」の活用表は以下の通りですが、「nous」「vous」以外で「é」が「è」になります。
単数 | 1人称 | je | tolère |
2人称 | tu | tolères | |
3人称 | il/elle | tolère | |
複数 | 1人称 | nous | tolérons |
2人称 | vous | tolérez | |
3人称 | ils/ells | tolèrent |
対義語(反対語)のつくり方
ところで、冒頭で触れた「わかりやすい形の」対義語(反対語)についてですが、「indiscipline(無規律)」のことです。
これは「discipline(規律)」の語頭に「in-」をつけているだけなので、わかりやすいですね!
こうした形で対義語(反対語)になっている場合は、性の変化がないので新たに覚える必要がありません。
つまり元の単語「discipline(規律)」が女性名詞なので、「indiscipline(無規律)」も女性名詞だということです。
同じタイプの対義語(反対語)名詞編
語頭に「in-」をつけて対義語(反対語)にする名詞には、次のようなものもあります。
- égalité(平等) → inégalité(不平等)
- justice(正義/公正) → injustice(不正義/不公平)
- sécurité(安全) → insécurité(不安定/不安全)
偶然ではありますが、上記もすべて女性名詞です。
同じタイプの対義語(反対語)形容詞編
語頭に「in-」をつけて対義語(反対語)にする形容詞を挙げます。
- utile(役に立つ) → inutile(役に立たない)
- sensible(敏感な/感じやすい) → insensible(鈍感な/感じない)
- visible(目に見える) → invisible(目に見えない)
若干異なるタイプの対義語(反対語)
元の単語の音によっては、発音しやすくするために、語頭の「in-」が「il-」「im-」「ir-」へと変化することがあります。
- possible(可能な) → impossible(不可能な)
- moral(道徳的な) → immoral(非道徳的な)
- logique(論理的な) → illogique(非論理的な)
- régulier(規則的な) → irrégulier(不規則な)
「indiscipline」について
語頭に「in-」などをつける単語は、名詞よりも形容詞の方がたくさんあります。
今回のフレーズにある「indiscipline」や元の単語である「discipline」よりも、形容詞の方がよく使われます。
そして「discipline」は「規律」「秩序」と訳され、形容詞の「discipliné」も「規律正しい」などと訳されているのをよく見かけます。
確かにその通りで、今回のフレーズ「Je ne tolère pas l’indiscipline.」も「無秩序は許容しない/許さない」であると思います。
形容詞「discipliné」の意味
ただし実際の会話でよく使われる形容詞の「discipliné」は、「規律正しい」というよりは「行儀がいい」という意味で使われていることがよくあります。
- Ces enfants sont bien disciplinés.
(この子たちはとてもお行儀がいい)
形容詞「discipliné」が「規律正しい」とともに「行儀がいい」という意味でも使われるのは、名詞「discipline」が「弟子」という意味の男性名詞「disciple」と語源的なつながりがあるからだと考えられます。
現代において「disciple(弟子)」という単語を使うのは、宗教的・哲学的・芸術分野での「師弟関係」に限られています。
職人の弟子には別の単語「apprenti」などが使われています。
なお「apprenti」については、近日中に別配信で扱う予定です。
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シリーズ【フランス語版 星の王子さまのフレーズ】は、ポッドキャストでも配信しています。
下のリンクのクリックでこの記事に該当するエピソードに飛びますので、発音の確認などにお使いくださいね!
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