実は男性ばかり
『星の王子さま』という作品には何人もの人物が登場しますが、すべて男性だということにお気づきでしょうか?
そのため今回のフレーズは、女性の言葉遣いを知ることのできる、貴重なチャンスです!
またこのフレーズには、過去を表す時に「être」を使う17の動詞の1つが含まれているので、覚えておくと便利です。
このフレーズの場所と背景
では、単語に入る前に、今回のフレーズ「Et je suis née en même temps que le soleil…」の場所と背景を確認しておきます。
このフレーズは第8章の最初の会話部分にある、バラの花のセリフです。
「et je suis née en même temps que le soleil」
「et」は「そして」、「je」は「わたし」、「suis」は「être」の活用形(現在形)です。
「née」は(人・動物が)「生まれる」「誕生する」などの意味の「naître」の過去分詞「né」の女性形です。
「en même temps que ~」で「~と同時に」、「le」は定冠詞単数男性形、「soleil」は「太陽」「日光」「日差し」を意味する男性名詞です。
背景を見てみると
遠く離れた地球の、それも人里離れた砂漠で、王子さまは自分の星に残してきた1輪の花を思っています。
王子さまの星にはシンプルな花はたくさんありましたが、ある時見たこともない植物が生えてきて観察していると、他の花とは違った様子でした。
今回のフレーズは、日の出とともに花開いたバラの言葉です。
新メンバーご紹介
ところで、今回のフレーズにある動詞「naître(生まれる/誕生する)」は、このシリーズの第198回でご紹介した「17の変わり者動詞」の1つです。
「17の変わり者動詞」というのは、私が勝手に命名したものですが、過去を表す時に「être」を使う17の動詞のことです。
17の変わり者動詞
「naître」の欄に意味を追加します。
動詞 | 意味 | 登場回 |
Devenir | ~になる | 第242回 |
Revenir | 再び来る/戻ってくる | 第200回 |
Monter | ||
Rester | ||
Sortir | ||
Venir | 来る | 第200回 |
Aller | 行く | 第207回 |
Naître | 生まれる/誕生する | 第340回 |
Descendre | ||
Entrer | ||
Rentrer | ||
Tomber | 倒れる/転ぶ/落ちる | 第198回 |
Retourner | ||
Arriver | ||
Mourir | ||
Partir | ||
Passer |
使用例
「naître(生まれる/誕生する)」の過去表現の使用例としては、「Je suis né à Tokyo.(私は東京出身です)」などがあります。
日本語では「○○出身」「○○の生まれ」のように言うので、あまり意識しないのですが、フランス語では過去表現になります。
通常の動詞なら「avoir + 過去分詞」の形で過去表現にしますが、17の変わり者動詞は「être + 過去分詞」にするのです。
フランス語の女言葉
なお女性が言う場合は、過去分詞「né」の語尾に「e」をつけて、「née」になります。
発音は変わりませんが、これこそがフランス語の女言葉です。
冒頭でも触れた通り、『星の王子さま』の登場人物は男性ばかりですが、バラの花だけは擬人化されてセリフもありますし、女性扱いされています。
なお人物ではないのにセリフがある存在としては、第21章に登場する「renard(キツネ)」もいます。
「renard(キツネ)」は男性名詞ですが、それだけではなく、このお話しの中でオスのキツネとして描かれているので、女性のセリフはバラの花だけなのです。
なぜ断定できる?
ところで、「renard(キツネ)」にはメスのキツネもいるはずなのに、なぜオスだと断定できるのでしょうか?
それは、キツネのセリフが男言葉になっているからです。
先ほど使用した「東京出身」の例を使うなら、キツネは「Je suis né à Tokyo.」のように言っており、「né」の語尾に「e」をつけていないのです。
日本語なら、バラの花やキツネのセリフなどを見て、男女の違いを間違いなく断定することはできませんが、フランス語だと簡単です。
フランス語は形容詞などにも語尾の変化があって面倒ですが、慣れてくると便利なこともあるのです。
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シリーズ【フランス語版 星の王子さまのフレーズ】は、ポッドキャストでも配信しています。
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