207 「lui」と「soi」の違い とは? Droit devant soi on ne peut pas aller bien loin…

名詞

フランス語なら王子さまの意図が見える!

今回のフレーズは王子さまのセリフですが、語り手の男性のつぶやきが元になっています。 

けれど王子さまは、男性の言葉をオウム返しのように繰り返したのではなく、1語だけ変えて返しているのです。 

和訳の際は、直訳してしまうと雰囲気を損なうのでわかりにくいのですが、フランス語で読むおかげで、王子さまの言わんとするところが見えてきますよ! 

このフレーズの場所と背景 

では、単語に入る前に、今回のフレーズ、「Droit devant soi on ne peut pas aller bien loin…」の場所と背景を確認しておきます。 

このフレーズは、第3章の終わりにあります。 

第3章最後のフレーズで、王子さまのセリフです。 

「droit devant soi」 

「droit」は「まっすぐな」「直線の」という意味、「devant」は「~の前」を表す前置詞です。  

「soi」は「自分」「それ自身」という意味です。  

「on ne peut pas aller」 

「on」は3人称代名詞単数で、主語としての「人」を表すのが、基本的な働きです。 

特殊な人称代名詞で、「人」が誰を表すのかは、文脈によって変わります。 

「私」「私たち」「あなた」「あなたたち」「彼/彼女」「彼/彼女たち」すべての意味になり得るうえ、一般的な意味での「人」「人々」になることがあります。 

詳細はこのシリーズの第93回を参照してください。 

「peut」は、「pouvoir」の3人称単数現在の活用形です。 

「pouvoir +(動詞の原形)」で、「~することができる」「~してもいい」という意味になります。 

「pouvoir」についている動詞の原形「aller」は、「行く」という意味です。 

ここでは「ne ~ pas」を伴なうことで、否定表現になっています。 

「bien loin」 

「bien」は「よく」「正しく」「非常に」「本当に」、「loin」は「遠く」という意味です。 

背景を見てみると 

語り手の男性が言った羊を繋ぐということに、王子さまはショックを受けたようでした。 

男性の心配をよそに、王子さまは笑い出し「どこに行くって言うの!」と言うので、「どこへでも」「まっすぐ前へ…」と男性は答えます。 

すると王子さまは「構いやしない、ぼくのところは本当にちっちゃいから」と言い、さらに付け加えたのが今回のフレーズです。 

「Droit devant lui…」 

今回のフレーズは、語り手の男性が言った「どこへでも」「まっすぐ前へ…」というフレーズを受けて王子さまが言ったものです。 

この「どこへでも」「まっすぐ前へ…」の部分「N’importe où.」「Droit devant lui…」は、このシリーズの第31回ですでに扱っています。 

そして今回のフレーズにある「Droit devant soi」の部分は、男性の言った(第31回の)「Droit devant lui…」を受けて王子さまが言ったものということです。 

「lui」と「soi」の違い 

「Droit devant lui」と「Droit devant soi」の違いは、「lui」と「soi」だけですよね? 

直訳すると「Droit devant lui」は「彼の前をまっすぐ」、「Droit devant soi」は「自分の前をまっすぐ」ですが、何が違うのでしょう? 

ここでの「lui(彼)」とは、繋がれていない羊のことです。 

男性の言った「Droit devant lui」は、まっすぐ行くのは「lui(彼)」羊に限定されています。 

それに対し、王子さまの言った「Droit devant soi」は、「soi(自分)」つまり羊に限らず、そこにいる存在は誰でも、まっすぐ行く対象になり得るのです。 

「lui(彼)」が「soi(自分)」になることで、「誰であろうと自分の前をまっすぐ」という意味になり、対象が広がったということです。 

遠くには行けない 

今回のフレーズの直前には「彼(王子さま)は少しメランコリーになって(愁いを含んで)付け加えた」という説明があります。 

この時の王子さまの頭の中には、本当に小っちゃい星の風景が広がっていたはず。 

故郷を思い出して懐かしく思ったところに、羊も加わったわけですが、羊だけではなく何が来ようと、遠くに行けるわけではないと言いたかったんですね! 

新メンバーご紹介 

ところで、今回のフレーズにある動詞「aller(行く)」は、このシリーズの第198回でご紹介した「17の変わり者動詞」の1つです。 

「17の変わり者動詞」というのは、私が勝手に命名したものですが、過去を表す時に「être」を使う17の動詞のことです。 

「Aller」の欄に意味を追加します。 

なお、「Tomber(倒れる/転ぶ/落ちる)」「venir(来る)」「Revenir(再び来る/戻ってくる)」はすでにご紹介済みです。 

17の変わり者動詞 

動詞 意味 登場回 
Devenir   
Revenir 再び来る/戻ってくる 第200回 
Monter   
Rester   
Sortir   
Venir 来る 第200回 
Aller 行く 第207回 
Naître    
Descendre   
Entrer   
Rentrer   
Tomber 倒れる/転ぶ/落ちる 第198回 
Retourner   
Arriver   
Mourir   
Partir   
Passer   
17の変わり者動詞

この記事を音声で聞くなら 

シリーズ【フランス語版 星の王子さまのフレーズ】は、ポッドキャストでも配信しています。 

下のリンクのクリックでこの記事に該当するエピソードに飛びますので、発音の確認などにお使いくださいね!

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