逆説だけではない「mais」
今回は合計3つのフレーズを扱いますが、中に「mais」が含まれています。
この単語は「しかし」「けれども」という逆説語として覚えている方が多いと思いますが、これは接続詞としての「mais」です。
副詞として使うと、まったく違う意味になるので、しっかりアップデートしてくださいね!
このフレーズの場所と背景
では、単語に入る前に、今回の3つのフレーズ「Mais non !」「Mais non !」「Je ne crois rien !」の場所と背景を確認しておきます。
この3つのフレーズは、第7章の中ほどにある語り手の男性のセリフです。
「mais non」
冒頭で触れた通り、ここでの「mais」は「しかし」「けれども」ではなく、副詞で強調語としての使い方です。
意味は「本当に」「まったく」ですが、次の否定を表す「non」とともに「mais non !」で「とんでもない!」になります。
「je ne crois rien」
「je」は「わたし」、「crois」は「~を本当だと思う」「~を信じる」という意味の「croire」の活用形(現在形)です。
ここでは「ne ~ rien」は「何も~ない」という強い否定表現を伴なっているので、「何も本当だと思わない」または「何も信じない」という意味になります。
背景を見てみると
生死にかかわる飛行機の修理にかかりきりの語り手の男性は、羊と花の関係という、大事とは思えない王子さまの質問に対して適当に答えた挙句、「花のトゲなんて何の役にも立たないし、ただ単に意地悪なだけだ」と言い放ちます。
すると王子さまは強く反発して花の味方をするのですが、今回のフレーズによって、男性に質問をさえぎられてしまいます。
ここでの「Je ne crois rien !」
男性がさえぎった王子さまの質問とは、「Et tu crois, toi, que les fleurs…(それで、きみさ、きみは花が~だろうと思うの?)」というものでした。
このフレーズについては、このシリーズの第312回で扱っています。
フランス語の目的語は後ろに来ることが多いので、途中でさえぎられてしまった王子さまの質問には、目的語がありません。
ですがこの時の男性は、飛行機の修理のことで頭がいっぱいで、花のことなど考えてはいられなかった様子です。
ただ単に「Et tu crois」の部分を聞いて即座に「Mais non !(とんでもない!)」を2回も繰り返して王子さまをさえぎります。
そして「Et tu crois」で聞いてきた王子さまに「Je ne crois rien !」と言ったのです。
つまりここでの「Je ne crois rien !」は、「何も本当だと思わない」「何も信じない」と言うよりもむしろ、「何も思わない!」だと考えられます。
副詞の「mais」
さて副詞の「mais」意味は「本当に」「まったく」ですが、使い方は「mais non !(とんでもない!)」だけではありません。
他にもよく使われるのが、これを含めた3つです。
- Mais oui !(本当だとも!)
- Mais non !(とんでもない!)
- Mais bien sûr !(もちろんだとも!)
感覚的には、和訳すると弱まってしまうような気がします。
かなり強い強調語で、実際の会話では「mais」の部分を強く発音します。
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シリーズ【フランス語版 星の王子さまのフレーズ】は、ポッドキャストでも配信しています。
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