「深紅のバラ」ではない?
今回のフレーズには「バラ」を意味する「rose」が、色を表す形容詞として使われています。
バラの花の色と言えば、「深紅のバラ」と言われるぐらいなので、私は濃い赤が代表的なのだと思っていました。
でもフランス語の「rose」は、違う色であることが多いのです。
このフレーズの場所と背景
では、単語に入る前に、今回のフレーズ「J’ai vu une belle maison en briques roses,」の場所と背景を確認しておきます。
このフレーズは、第4章の中ほどにあります。
第4章の3枚目の挿絵のすぐ後の段落にあるフレーズで、語り手の男性による説明部分です。
「j’ai vu」
「j’ai」は「わたし」という意味の「je」の省略形「j’」と、「avoir」の活用形(現在形)「ai」が合わさったものです。
「vu」は「~を見る」「~が見える」などの意味の「voir」の過去分詞なので、「ai(avoir)+(動詞の過去分詞)」で、過去を表す表現です。
「une belle maison」
「une」は定冠詞単数女性形、「belle」は形容詞「beau」の単数女性形で、人の容姿や景色などが「美しい」、人の才能やモノ・コトが「すばらしい」という意味です。
名詞の前に来ることがある形容詞なので、名詞の姓や数だけでなく、名詞が母音から始まるかどうかなどによっても形が変わります。
このシリーズの第145回でまとめているので、参照してください。
「maison」は女性名詞で「家」という意味です。
「en briques roses」
ここでの「en」は「~でできた」、「briques」は「レンガ」という意味の女性名詞「brique」の複数形です。
ここでの「roses」は、色を表す形容詞「rose」の複数形です。
本来は「バラ色の」または「ピンク色の」という意味ですが、「brique(レンガ)」を修飾することで、「赤(レンガ)」になります。
背景を見てみると
語り手の男性は、王子さまの星だと考える小惑星、B612の発見にまつわる話しから、大人たちの性質へと、話題がシフトしています。
大人たちは物事の本質を見ようとしないので、例えば新しい友だちについて話すなら、その人の年齢や体重、果ては父親の収入など、数字にしか興味がありません。
これは人に関することだけでなく、モノについても同じことです。
その例として、大人たちに言っても理解されない表現で、ステキな家の様子が語られるのですが、今回のフレーズはその一部です。
この部分のフレーズの全体は、「J’ai vu une belle maison en briques roses, avec des géraniums aux fenêtres et des colombes sur le toit…elles ne parviennent pas à s’imaginer cette maison.」です。
いろいろなピンク色
さて、先ほどもご紹介した通り、色を表す形容詞としての「rose」は、「バラ色の」または「ピンク色の」という意味です。
実際に生活しているなかで「rose」を使うのは、「ピンク色の」という意味であることが多いです。
そしてピンク色と言ってもさまざまですが、「rose ~」にすることで表現します。
日本語にも「桃色」や「サーモンピンク」があるように「rose pêche(桃のピンク」「rose saumon(サーモンのピンク)」があります。
フランス語独特なのが、「rose bonbon(キャンディーのピンク)」ですね。
フランスのアメはかなりカラフルなものが多いので、「rose bonbon」は派手なピンク色です。
逆に「rose pâle(淡いピンク)」という言い方もします。
赤レンガの色
ところで今回のフレーズでは、「en briques roses(赤レンガでできた)」とある通り、「rose」はレンガの色として使われています。
江戸時代の終わりから明治時代初期に輸入されていたレンガには、フランス産が少なからずあったそうなので、日本語の赤レンガの色と同じだと考えてよさそうです。
赤レンガの色は、日本語で言うならピンクよりも深い赤になると思うのですが、この色にもやはり「rose」が使われるのです。
楽しく幸福な色
そして色としての「rose」には、別の使い方もあります。
「バラ色の人生(la vie en rose)」や「バラ色の世界(le monde en rose)」などの「バラ色」です。
個人的な思い込みではありますが、フランス語を話すようになるまでの私は、「バラ色の人生」と聞いてイメージしていたのは、深紅のバラの色でした。
でもフランス語で毎日を過ごすようになってからは、「la vie en rose(バラ色の人生)」で思い浮かぶのは、少し濃いめのピンク色といったところでしょうか。
どちらにしても、「バラ色」は楽しく幸福感にあふれている状態です。
これを読んでくださっているあなたの今後が、少しでもバラ色になりますように!
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