ペアで覚えよう!
今回のフレーズにある動詞には、よく似た形の反対語が存在します。
形が似ているだけではなく、和訳すると同じ意味になってしまう場合もあるので、私自身も入門期の頃に、何度も取り違えたことがあります。
でも、始めから2つを一緒に覚えればラクですよね!
このフレーズの場所と背景
では、単語に入る前に、今回のフレーズ、「Où veux-tu emporter mon mouton ?」の場所と背景を確認しておきます。
このフレーズは、第3章の後半にあります。
1枚目の挿絵から2行目にあるフレーズで、語り手の男性のセリフです。
「où veux-tu」
「où」は疑問詞で「どこ」という意味、「veux」は「vouloir」の活用形(現在形)、「tu」は「きみ」「おまえ」を意味する2人称代名詞単数です。
疑問文なので「veux」と「tu」の倒置が起こっていて、ハイフンでつながれています。
「emporter mon mouton」
「vouloir +(動詞の原形)」で、「~することを望む」という意味になります。
「vouloir」についている動詞の原形「emporter」は、「(モノを)持って行く」「(モノを)持ち去る」などという意味です。
「mon」は所有形容詞1人称単数で「わたしの」、「mouton」は「羊」を意味する男性名詞です。
背景を見てみると
語り手の男性は王子さまの求めに応じて羊の絵を3枚も描きましたが、王子さまは気に入りません。
命の危機もあるなか、突然見知らぬ少年に理由も知らされないままに何度も絵を描き直させられて、とうとう堪忍袋の緒が切れた男性は、ただの箱の絵を描きなぐって渡します。
でも男性の想像以上に、王子さまは「羊が入っているはずの箱の絵」が、とても気に入ります。
なお男性は王子さまと話すうち、彼が他の惑星からやって来たということを、ほぼ確信するようになりました。
「他の惑星」ということに興味をそそられた男性は、「どこから来たの?」「«きみの家»って、どこ?」と立て続けに聞いてしまいます。
そしてさらに、今回のフレーズの質問です。
「私の羊」
今回のフレーズは背景で触れたとおり、語り手の男性のセリフです。
なので「mon mouton(私の羊)」とは、男性が描いた羊、というよりは、男性が4枚目に描いた箱の絵の中に「入っているはずの羊」です。
この羊は、普通の人はおろか、絵を描いた当人である語り手の男性さえも見ることができない羊です。
そしてこの羊は、「emporter(モノを持って行く)」という動詞の目的語になっています。
反対語は?
さて、冒頭で触れた「emporter(モノを持って行く)」の反対語とは、「apporter」という動詞です。
「apporter」には、「(モノを)持って来る」「(モノを)携行する」などの意味があります。
なぜ間違えやすい?
「emporter(モノを持って行く)」と「apporter(モノを持って来る)」なので、和訳の部分だけを見ると、混乱など起きそうにないと思いませんか?
でもそもそも、日本語とフランス語の「行く」と「来る」には一部でかみ合わない使い方があり、日本語で「行く」と言うべき状況なのに、フランス語では「来る」ということがあるのです。
なので、日本語では「持って行く」と言うべきなのに、フランス語では「モノを持って来る」と訳されることが多い「apporter」になることが、しばしばあります。
日本語とフランス語の「行く」と「来る」の関係については、このシリーズの第199回でご紹介しているので、ご参照ください。
「持って行く」の例
「モノを持って来る」と訳される「apporter」が、日本語の「持って行く」の意味で使われる例をご紹介します。
持ち寄りのホームパーティーに招待された時などに、ホスト役の友人に何を持って来られるのかを聞かれることがあります。
その際の返事としては、次のように言うのです。
「Je peux apporter une tarte chez toi.(君の家にタルトを持って行けるよ)」
日本語なら、この状況で「持って来る」とは決して言いません。
「emporter」と「apporter」は、ぜひセットで覚えてくださいね!
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シリーズ【フランス語版 星の王子さまのフレーズ】は、ポッドキャストでも配信しています。
下のリンクのクリックでこの記事に該当するエピソードに飛びますので、発音の確認などにお使いくださいね!
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