【フランスでの生活】暖炉や煙突のある暮らしとは?

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王子さまの煙突掃除

このブログ/ポッドキャストでは、【フランス語版 星の王子さまのフレーズ】というシリーズをお届けしており、現在は『星の王子さま』第9章を扱っています。 

その中に王子さまの旅立ちのシーンがあるのですが、王子さまが出かける前に済ませたのが、煙突掃除でした。 

これは昔ながらのフランス人の生活を知ると、非常に納得できる描写なので、暖炉や煙突のある暮らしについてご紹介します。 

出発前に済ませたこと

日本に暮らしながら『星の王子さま』を読んだことのある方は、第9章で多少の違和感を覚えなかったでしょうか?  

旅行の前に王子さまが済ませたのが、火山の煙突掃除だったからです。 

そもそも、火山の噴火を煙突火災に例えたり、それを防ぐために煙突掃除をするという発想が、日本に暮らす日本人にはあまりないと思います。 

でも実際にフランスで暮らし、暖炉や煙突のある暮らしを経験してみると、この発想が身近に感じられるのです。 

暖炉のある暮らし

現在暮らす家にはないのですが、フランスに来た直後に暮らしていた田舎の家には、暖炉や煙突がありました。 

薪をくべて火をつけるのですが、日本で都会暮らしだった私には、かなり新鮮でした。 

薪が燃えている時の炎はきれいで、ずっと眺めていても飽きないものです。 

時には栗などを焼いたり、マシュマロをあぶって溶かして食べたりもしました。 

この家には6年住んだので、こうした楽しみは、ひと通りは経験したと思います。 

デメリットも!

ただし暖炉や煙突のある暮らしは、いいことだけではありませんでした。 

重い薪は主人が運んでくれましたが、外に置いてあったので虫がついていることも多く、家の中が虫だらけになったことも、1度や2度ではありません。 

火をおこす時には風を送る必要があるので灰が飛び散りますし、暖炉の中の灰も掃除が必要です。 

おまけに暖炉を使っていない夏場には、煙突の中にハチが巣を作ってしまったことが何度かありました。 

それもミツバチではなく、スズメバチやさらに大きなマルハナバチだったので、小さな子どもと暮らしていた当時の私には、恐怖でしかありませんでした。 

窓や暖炉の扉を閉めておいても、送風用の穴からハチが家の中に入って来たからです。 

年に1度の義務とは?

こうしたデメリットとは別に、暖炉や煙突がある家には、やらなければいけないことがあります。 

それは年に1度の煙突掃除です。 

フランスでは火災保険の契約に、この煙突掃除が義務として明記されており、資格を持っている業者に依頼して掃除してもらい、証明書をもらわなくてはなりません。 

日本でも、北国で煙突のある暖房器具を使っていれば、似たような状況かと思います。 

けれど私にとって印象的だったのは、フランス語には「煙突掃除」という言葉が、他の掃除とは区別されて特別な単語として存在しているということでした。 

思い入れのある言葉

特別な単語があるというのは、思い入れがあるからです。 

たとえば日本語なら、お米の苗は「イネ」、収穫したものが「コメ」、調理後は「ごはん/メシ」のように、単語がたくさんあります。 

フランスにはお米にそれほど思い入れがないので、フランス語だとこれらはすべて「riz」なのです。 

その代わりというわけではありませんが、フランス語には「煙突掃除」に関する専門の単語があります。 

ramonage 名詞 煙突掃除 
ramoneur 名詞 煙突掃除人 
ramoner 動詞 煙突掃除をする 

* 動詞「ramoner」は【フランス語版 星の王子さまのフレーズ】第351回で扱っています。 

ありがたい存在とは?

このように、フランス人には煙突に思い入れがあるのですが、それはただ単に特別な単語があるからだけではありません。 

家にとって良いものは煙突から入って来ると信じられていたり、「ramoneur(煙突掃除人)」が幸福のシンボルのように考えられていたりしていたのです。 

特に煙突掃除は、怠ってしまうと火事の原因になるので、現在でも「ramoneur(煙突掃除人)」という職業はありがたい存在だとされています。 

豊かで幸福な暮らしとは?

『星の王子さま』では、王子さまが火山のすすを払う様子を「ramoner(煙突掃除をする)」という動詞を何度も使って描写しています。 

現在のフランスは、環境規制の影響で、暖炉のある家が少なくなりつつありますし、またたとえ暖炉があっても、実際には使っていない家庭が増えています。 

それでも、リビングに暖炉がある家は、暖かな家庭のシンボルのように捉えられていることが多いのです。 

まして『星の王子さま』が執筆された当時は、暖炉や煙突が豊かで幸福な暮らしの絶対条件だったはずです。 

作者が王子さまの星に小さな火山を登場させて、暖炉や煙突のある暮らしに似せたのは、こうした暖かいイメージを持たせる狙いもあったのかもしれませんね! 

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