文法的に「あれ?」な動詞
フランス語の動詞の中には、日本語ネイティブにとって、文法的に「あれ?」と思われるものがあります。
今回扱う「manquer」に関しては、一部の使い方で「主語と目的語が逆転しているのでは?」と感じてしまいます。
スッキリできるように、まとめてみます。
「Tu me manques.」
2025年5月9日配信の【フランス語のフレーズ】愛情表現②で「Tu me manques.」というフレーズをご紹介しました。
フランス語の愛情表現の中では、よく知られている「Je t’aime.」に次いで使われているかも知れないと思うほど、ポピュラーなフレーズです。
この中で使われている動詞「manquer」は「(モノ・コトが主語で)欠けている/足りない」「(人が主語で)欠席する」などの意味の「manquer」の活用形(現在形)です。
詳細は【フランス語のフレーズ】愛情表現②と重複するのでここでは省きますが、フレーズの意味としては「きみがいなくて寂しい」です。
3種類の「manquer」
「manquer」という動詞は、主に3種類の使い方をします。
- manquer à +(人)
- manquer de +(モノ/コト)
- manquer +(名詞)
「manquer」の基本的な意味は「欠けている」ですが、前置詞(「à」「de」)の有無・後ろに何が来るかによって、結構イメージが変わります。
それぞれの形を順番にご紹介します。
① manquer à +(人)
「Tu me manques.(きみがいなくて寂しい)」は、この形です。
「manquer à +(人)」という形で「(人)に寂しい感じを与える」という意味なので、理論上は「Tu manques à moi.」ですが、この言い方はせず、「Tu me manques.」になります。
「à moi」の部分が「me」になることで前に出ています。
感情・人間関係の場面でよく使う表現です。
この形でやっかいなのは、主語と目的語が入れ替わっているかのように感じる、逆転構造だということ。
「いなくて寂しい」と思っているのは「わたし」なのに目的語になっており、「いない人」である「きみ」が主語だからです。
英語でさえ、同じことを言おうとすれば、「わたし」が主語で「きみ」が目的語なので、奇妙な感じは付きまとってしまいますが、慣れるしかありません。
その他の例文としては、
- Mes parents me manquent.
(両親がいなくて寂しい)
- Paris lui manque.
(彼はパリが恋しい)
慣れるためのポイントは、
- 「manquer à」= 誰かに「欠けている」
- つまり「~が寂しい」「~が恋しい」
という意味になるということです。
繰り返しになりますが、「Tu me manques.」なら、「わたしにとって欠けている」ので、「わたしが寂しい」と思っているということですね。
② manquer de +(モノ/コト)
次に「manquer de +(モノ/コト)」という形をご紹介します。
「manquer à +(人)」に似てはいますが、働きが違うので、頭を切り替えてください。
「manquer de +(モノ/コト)」で「~が足りない」「~を欠いている」という意味です。
モノ・性質について、不足を表す表現です。
例文としては、
- Je manque de temps.
(時間が足りない)
- Nous manquons d’argent.
(私たちにはお金が不足している)
- Il manque de patience.
(彼は忍耐が足りない)
- Cette soupe manque de sel.
(このスープは塩が足りない)
ポイントは、
- 「manquer de」= 何かが「不足している」
- つまり「~が足りない」
③ manquer +(名詞)
最後は、名詞が直接ついた「manquer +(名詞)」という形です。
名詞の部分は、(~を)を表す直接目的語です。
「manquer +(名詞)」で「〜を逃す」「〜に間に合わない」「〜を失敗する」といった意味になります。
特に交通機関・チャンス・イベントに関する場面でよく使われます。
例文としては、
- J’ai manqué le train.
(電車に乗り遅れた)
- Elle a manqué le bus.
(彼女はバスに乗り損ねた)
- Nous avons manqué le début du film.
(映画の冒頭を見逃した)
- Il a manqué une belle occasion.
(彼は絶好のチャンスを逃した)
ポイントは、
- 「manquer +(名詞)」= 何かを「逃す」「失敗する」
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