どちらも「南」なのに
先日(2024年7月22日)公開した南仏の記事で、「le Midi」と「le sud de la France(南仏)」は違うと述べました。
ただしこの中で使われている「midi」と「sud」は、どちらも「南」を意味する言葉です。
どうして同じ意味の言葉が2つ存在するのか、その他の方角にも2種類ずつあるのか、さらに方角を使った言い回しについてもご紹介します。
具体的な方角や位置を示す
フランス語を習い始めた人が、方角について覚えるのは、次の4つの単語です。
- 北: nord
- 南: sud
- 東: est
- 西: ouest
現代フランス語ではこの4つが基礎になっていて、日常的な会話や地理的な文脈で使われます。
「東北」なら「nord-est」、「南西」なら「sud-ouest」のようになるので、具体的な方角や位置を示す場合には、これですべてを表すことができます。
方角を含む慣用句
この「nord/sud/est/ouest」は日常会話でよく使われるので、慣用句になっています。
よく使われる2種類をご紹介します。
「perdre le nord」
「perdre le nord」は直訳すると「北を失う」になりますが、「混乱する」「方向感覚を失う」「心を乱される」という意味です。
通常、地図は北が上になっていますね?
北が方角の基準になっているからですが、その「北を失う」つまり「(北という)基準がわからなくなっている」状態であることを表しています。
「être complètement à l’ouest」
そして「être complètement à l’ouest」の直訳は「完全に西にいる」ですが、「非常に疲れている」「意識が飛んでいる」といった意味です。
ただし「Il est complètement à l’ouest !」なら、「アイツ、ぶっ飛んでる!」のようになってしまうので、使い方には気をつけてください。
ただ単に「彼はとても疲れている」と言いたいなら、「Il est très fatigué.」にしておいた方が無難です。
学術的・文化的な使い方
「nord/sud/est/ouest」を使えば、方角や位置などをすべて表すことができるのですが、次の4つも存在します。
- 北: septentrional
- 南: midi
- 東: oriental
- 西: occidental
この4つは正式名称に使われたり、学術的や文化的な文脈で使われたりすることが多いからです。
例えば、「la civilisation occidentale(西洋文明)」や「l’art oriental(東洋の芸術)」などは、代表的な使い方です。
注意点は?
注意点が1つあります。
「nord/sud/est/ouest」は名詞ですが、「septentrional/midi/oriental/occidental」に関しては、「midi」だけが名詞で、その他は形容詞だということです。
フランス語の形容詞は性や数で変化します。
つまり「la civilisation occidentale(西洋文明)」のように、「civilisation」という女性名詞を修飾する「occidental」は、語尾に「e」がついて「occidentale」になります。
なぜ2種類ずつある?
では、そもそもなぜ、同じ方角を意味する単語が2つずつ存在するのかですが、それは各々の起源の違いによります。
「南」を例にとってご紹介します。
sud : 古英語の「sūþ」が起源
midi: ラテン語の「meridies」が起源
フランス語の起源
実は各方角で起源となった言語が異なっていて、古いフランス語や古いドイツ語が起源になっているものもあります。
これは方角に関する単語だけではありません。
現代フランス語で使われている単語のルーツをたどると、いろいろな言語を目にします。
古いものにはアラビア語などもよく登場しますが、最近目立つのはやはり日本語!
今や「yakitori(焼き鳥)」「katsudon(カツ丼)」「kaki(柿)」までもが市民権を得ています。
もちろん今は外来語扱いですが、「manga(マンガ)」や「judo(柔道)」「zen(禅)」などはすでに立派なフランス語です。
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