意味の広がりや違いを感じよう!
日本で広く使われている外来語には、フランス語由来のものが少なくありません。
外来語があることでフランス語の単語が覚えやすくなる反面、本来の意味が抜け落ちたり、変わってしまうことすらあります。
外来語・元の単語の両方を知って、意味の広がりや違いを感じてください。
第32回目は、「サロン」です。
日本語の「サロン」
日本語の「サロン」はフランス語由来の外来語です。
「サロン」と言えば、ヘアサロン・エステサロン・ネイルサロンなど、主に美容関係の「サービスの場所」であることがほとんどです。
また、美容関係に比べると頻度は落ちますが、文学サロン、トークサロンなどの「趣味の集まり」としての使い方や、サロン外交・サロン文化などの「やや洗練された社交空間」という使い方もあります。
- サロン①「(美容関係の)サービスの場所」
- サロン②「趣味の集まり」
- サロン③「やや洗練された社交空間」
フランス語の「salon」
フランス語の「salon」にも「(美容関係の)サービスの場所」という意味がありますが、この言葉の元になった意味は「応接間」でした。
歴史的にみると、貴族やブルジョワ階級といった裕福な人たちの家の応接間に人が集まるようになって「社交の場」となったのです。
また、文学や芸術などが好きな人たちの「趣味の集まり」になる場合も多く、それが発展して「展示会・見本市」の意味にもなりました。
日本語の「サロン」は主に「(美容関係の)サービスの場所」として使われますが、フランス語の「salon」がこの意味で使われるようになったのは、近年になってからのことです。
フランス語の「salon」の使い方をまとめると、
- salon①「応接間」
- salon②「社交の場」
- salon③「趣味の集まり」
- salon④「展示会・見本市」
- salon⑤「(美容関係の)サービスの場所」
ということになります。
いろいろな「salon」
「salon」の例文を挙げておきます。
- Nous prenons le café dans le salon.
(私たちは応接間でコーヒーを飲む)
→ salon①「応接間」
- Elle organise un salon littéraire chaque mois.
(彼女は毎月文学サロンを開いている)
→ salon③「趣味の集まり」
- Je vais au salon de coiffure.
(美容院に行く)
→ salon⑤「(美容関係の)サービスの場所」
などがあります。
フランス語の「美容院」
ところで、例文に入れた「salon de coiffure(美容院)」は、どちらかと言うと話し言葉です。
本当によく使われる言い方ではあるのですが、書き言葉としては「institut de beauté」になっている場合も多いです。
なお、この「institut de beauté」は、日本語の「美容院」本来の意味に近いかもしれません。
というのも、ヘアサロンつまり髪の毛の手入れだけを行っているお店も多いものの、ネイルやエステを兼ねている場合も多いのです。
人の美容に関する、あらゆる施術をしてくれる施設という意味での「美容院」という言葉がしっくりきます。
コーヒーと紅茶の違いとは?
ちなみに、前述通りフランス語の「salon」が貴族やブルジョワ階級の人たちの家の「応接間」であり、そこに集まる人たちがこの言葉の意味の出発点です。
そのためフランス語の「salon」には、なんとなく「上品な場所」というニュアンスがあります。
フランスの街なかには「salon de thé」と呼ばれるティーショップがありますが、そうしたお店はゆったりしていて、おしゃれなところが多いものです。
それに比べて「café」と呼ばれるコーヒーショップは、誰でも気軽に入れて、カウンターで立ち飲みする人もいるようなお店です。
人にもよりますが、一般的にはフランス人にとって、コーヒーは毎日一服するときにさっと飲むもの、紅茶はもっと時間をかけてゆったり飲むもの、という感覚があるせいなのかもしれません。
同じ喫茶店なのに、「café(コーヒーショップ)」と「salon de thé(ティーショップ)」という言い方の違いが、その感覚を端的に表しているように思われるのです。
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