意味の広がりや違いを感じよう!
日本で広く使われている外来語には、フランス語由来のものが少なくありません。
外来語があることでフランス語の単語が覚えやすくなる反面、本来の意味が抜け落ちたり、変わってしまうことすらあります。
外来語・元の単語の両方を知って、意味の広がりや違いを感じてください。
第26回目は、「アンケート」です。
日本語の「アンケート」
日本語の「アンケート」はフランス語由来の外来語です。
「アンケート」と言えば、「質問票に答える調査」を説明することばとして使われます。
- アンケート「質問票に答える調査」
フランス語の「enquête」
フランス語の「enquête」にも「質問票に答える調査」といった意味がありますが、それは「enquête」ということばのごく限られた一部の意味にすぎません。
フランス語の「enquête」は、広範囲の調査・取り調べ・探求に関して使える、かなり汎用性のあることばだからです。
具体的には「警察の捜査」「ジャーナリズム・報道調査」「質問票に答える調査」「科学的・社会的な調査」「(抽象的な意味での)探求・究明」といった意味があります。
フランス語の「enquête」の使い方をまとめると、
- enquête①「警察の捜査」
- enquête②「ジャーナリズム・報道調査」
- enquête③「質問票に答える調査」
- enquête④「科学的・社会的な調査」
- enquête⑤「(抽象的な意味での)探求・究明」
ということになります。
日本語の「アンケート」に当たるのは、enquête③「質問票に答える調査」だけです。
いろいろな「enquête」
「enquête」の例文を挙げておきます。
- La police ouvre une enquête.
(警察が捜査を開始する)
→ enquête①「警察の捜査」
- Un journaliste fait une enquête sur la corruption.
(記者が汚職について調査をしている)
→ enquête②「ジャーナリズム・報道調査」
- Les élèves répondent à une enquête de satisfaction.
(生徒たちは満足度のアンケートに答えている)
→ enquête③「質問票に答える調査」
- Une enquête montre que les jeunes lisent moins qu’avant.
(調査によると、若者は以前より本を読まなくなっている)
→ enquête④「科学的・社会的な調査」
- C’est une enquête sur la vérité.
(それは真実を探求することだ)
→ enquête⑤「(抽象的な意味での)探求・究明」
などがあります。
勘違いした「enquête」
フランス語の「enquête」は、本当によく使われる言葉です。
特にニュースなどでは、ひんぱんに耳にします。
フランスに来たばかりの頃、まだインターネットもなかったので、よくわからないながらも、一生懸命にテレビを観ていました。
当時の私にとっては、ニュースキャスターのフランス語など、難しいのはもちろん、話すスピードも速すぎるため、単語がいくつか聞き取れればいい方です。
災害や事件の動画とテロップを見ることで、なんとなく意味がわかったつもりになったり、全くわからなかったり、という状態でした。
ニュースなど、同じものを繰り返して放送するわけではありませんし、今のようにネットで見逃し配信を見られるわけでもないので、辞書を引く時間などありません。
そうした状況のなか、事件だと思われる画像とともに、「la police」と「enquête」という単語を聞き取ったわたし。
「あ~、フランスの警察って、アンケートを取るんだ、ふ~ん!」と理解してしまいました。
これはもちろん、「警察が捜査を始めた」といった類のニュースだったに違いないのですが、当時の私にとって「enquête」はすなわち「アンケート」を意味していたのです。
そしてこの勘違いは、その後なんと数か月にも渡って続いてしまいました。
辞書を見たときに「捜査」の意味だと知って、ひとりで恥ずかしいやら、ホッとするやら…。
ひとりでニュースを見て「また警察はアンケートを取ってるのか!」などと思っていただけで、幸い他の人には聞くチャンスもなかったので、誰にも笑われたりせずに済んだのです。
フランスの警察だって、時にはアンケート調査をするかもしれませんが、それはまずニュースにはならないので、「捜査」の意味だと理解しましょう!
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