意味の広がりや違いを感じよう!
日本で広く使われている外来語には、フランス語由来のものが少なくありません。
外来語があることでフランス語の単語が覚えやすくなる反面、本来の意味が抜け落ちたり、変わってしまうことすらあります。
外来語・元の単語の両方を知って、意味の広がりや違いを感じてください。
第23回目は、「グレード」です。
日本語の「グレード」
日本語の「グレード」は英語由来の外来語です。
「グレード」は主に 「品質やランクの高さ・レベル」 を意味します。
製品やサービスのランク分けに使われることが多く、「ハイグレードなホテル」や「車のグレードを選ぶ」のような使い方をします。
- グレード 「品質やランクの高さ・レベル」
フランス語の「grade」
前述通り、日本語の「グレード」は英語由来ですが、元をたどるとフランス語の「grade」、さらにはラテン語に行きつきます。
つまり元になったラテン語があり、そこからフランス語の「grade」が生まれて英語に入り、さらに日本語の「グレード」になったということです。
実は日本語の「グレード」の「品質やランクの高さ・レベル」 という意味は、英語に入ってから生まれており、比較的新しいものです。
そのため、フランス語の「grade」には、日本語の「グレード」の持つ「品質やランクの高さ・レベル」という意味はありません。
フランス語の「grade」の意味は「階級・等級」で、特に 軍隊・学校・官僚制度などの公式な階級 を指すことが多い言葉です。
フランス語「grade」の使い方をまとめると、
- grade「階級・等級(特に 軍隊・学校・官僚制度などの公式なもの)」
ということになります。
いろいろな「grade」
「grade」の使用例を挙げておきます。
- Il a obtenu le grade de capitaine.
(彼は大尉の階級を得た)
→ grade「階級・等級(特に 軍隊・学校・官僚制度などの公式なもの)」
- Les grades universitaires comprennent la licence, le master et le doctorat.
(大学の学位には学士・修士・博士が含まれる)
→ grade「階級・等級(特に 軍隊・学校・官僚制度などの公式なもの)」
などがあります。
繰り返しになりますが、フランス語の「grade」と言えば「公式な階級・等級」を指すことがほとんどで、ホテルや車などに使うことばではありません。
どちらかというと、堅苦しいイメージです。
「grade」の成り立ち
前述通り、フランス語の「grade」には元になったラテン語がありました。
この元のラテン語には「段・歩み」という意味がありました。
この単語をもとにフランス語の「grade」が生まれ、「階級・等級」という意味になりました。
これが後に英語に入って、さらに別の意味が加わるのですが、フランス語の「grade」に新しい意味が追加されたり、英語からの逆輸入がされたりすることはなく、当初からの「階級・等級」という意味のままで現在でも使われています。
英語の場合は、スペルこそ変わらず「grade」のままですが、発音は英語風になり、それが日本語にも影響して「グレード」になりました。
ただし意味に関しては、英語に入ってから独自の進化を遂げました。
フランス語の「階級・等級」という意味に加え、「品質やランクの高さ・レベル」 という意味も追加されたのです。
そして日本語の「グレード」になると、元のフランス語「grade」にあった「階級・等級」という意味は消えてしまい、新たに追加された「品質やランクの高さ・レベル」 という意味だけが残ったのです。
要するに、現在のフランス語・英語・日本語の意味をまとめると、
- フランス語「grade」:「階級・等級」
- 英語「grade」:「階級・等級」「品質やランクの高さ・レベル」
- 日本語「グレード」:「品質やランクの高さ・レベル」
ということになり、フランス語の「grade」と日本語の「グレード」の意味に共通点はありません。
英語を介したことで、意味が入れ替わってしまったのです。
これまでたくさんの「意味が狭まった外来語」の例をご紹介してきましたが、「グレード」の意味が狭まったのは英語との比較であって、由来になったとはいえ、フランス語の「grade」は、もはや全くの別物です。
日本語の「グレード」のつもりでフランス語の「grade」を使うことはできないので、注意してくださいね!
この記事を音声で聞くなら
この記事は、ポッドキャストでも配信しています。
下のリンクのクリックで該当するエピソードに飛びますので、発音の確認などにお使いくださいね!
コメント