意味の広がりや違いを感じよう!
日本で広く使われている外来語には、フランス語由来のものが少なくありません。
外来語があることでフランス語の単語が覚えやすくなる反面、本来の意味が抜け落ちたり、変わってしまうことすらあります。
外来語・元の単語の両方を知って、意味の広がりや違いを感じてください。
第2回目は、「アントレ」です。
日本語の「アントレ」
日本語の「アントレ」は、フランス語由来ではあるものの、アメリカ英語経由で入った言葉だと言われています。
そのせいか、「アントレ」と言えば「コース料理の主菜」と認識されてきました。
ただし後述する通り、「アントレ」の由来になったフランス語を料理用語として使う際には「コース料理の前菜」という意味です。
アメリカで間違った認識で広まった言葉が、そのまま輸入されてしまったのですね。
現在は、フランスで修業した日本人の料理人が増えた影響なのか、フランス語と同じように「コース料理の前菜」として「アントレ」という言葉が使われているレストランが増えたようです。
でも、まだ主菜として使っている例もあるので、前菜と主菜が入り混じっているという、不思議な状況ではあるようです。
とはいえ、「アントレ」と言えば、ほぼほぼ料理用語に限定されているという点は、変わりません。
つまり
- アントレ「コース料理の主菜(前菜の場合も)」
ということです。
フランス語の「entrée」
日本語の「アントレ」の元になったのは、フランス語の「entrée」という女性名詞です。
そもそもこの単語は「入る」という意味の動詞「entrer」が名詞化したもので、基本的な意味は「入ること」や「入るところ」。
つまり「入口」や「入場」「入力」といった意味が強いのです。
料理用語として使われる際には「前菜」と訳されますが、それはもちろん「コース料理の入り口としての1品」だから。
わたし自身も日本からフランスに来て間もない頃は、「あれ?主菜じゃなかったっけ?」と思いましたが、じきに納得しました。
フランス語の「entrée」の使い方をまとめると、
- entrée①「コース料理の前菜」
- entrée②(建物などの)「入口」「玄関」
- entrée③(イベントや施設などへの)「入場」「入場料」
- entrée④(データや記録などの)「入力」「記入」
- entrée⑤(比ゆ的に)「参入」「登場」
ということになります。
「コース料理の前菜」以外は、見事に「入」という漢字のつく単語だらけですね。
いろいろな「entrée」
料理用語以外の「entrée」の例文をいくつか挙げておきます。
- L’entrée est gratuite pour les enfants.
(子どもは入場無料です)
→ entrée③「入場」「入場料」 - L’entrée des données est automatique.
(データ入力は自動です)
→ entrée④「入力」「記入」 - L’entrée du musée est à gauche.
(美術館の入口は左側です)
→ entrée②「入口」「玄関」
などがあります。
こうして「入ること」に関連する単語ばかりがそろっていると、アメリカで主菜だと誤解されてしまったのが不思議ですらありますね!
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