若者言葉から昇格した略語
フランス語で話していると、仏和辞書などには載っていないような言葉も耳にします。
元は若い人たちが仲間内で使っていた略語などがほとんどですが、時間とともに社会的にも認知されて、多くの人が使うようになった言葉です。
かしこまった場では使わなくても、仲の良い同僚となら使う程度の略語や派生語などを中心にご紹介します。
今回はその第35回目「ORL」です。
「ORL」とは?
「ORL」とは、「oto-rhino-laryngologue(耳鼻咽喉科医)」「oto-rhino-laryngologie(耳鼻咽喉科)」のことです。
「oto-rhino-laryngologue」の場合は「耳鼻咽喉科の医師」、「oto-rhino-laryngologie」なら「診療科としての耳鼻咽喉科」という意味なのですが、「ORL」はどちらの意味にもなります。
使われているのが医師としての「ORL」なのか、診療科としての「ORL」なのかは、文脈で判断することになります。
つまり2025年4月7日配信の【フランス語のフレーズ】日常会話で使う略語㉘で扱った「dermato」などと同様です。
使用例
「ORL」を使ったフレーズには、次のようなものがあります。
- Je vais voir mon ORL.
(かかりつけの耳鼻咽喉科医に診てもらう)
- J’ai rendez-vous en ORL.
(耳鼻咽喉科の予約がある)
1つ目のフレーズの「mon ORL」は、直訳すると「わたしの耳鼻咽喉科医」、要するに「かかりつけの耳鼻咽喉科医」ということです。
2つ目のフレーズの「en ORL」という言い方は、「en cardio(心臓科に)」など他の医療関係の略語と同様、「en 〇〇」の形で診療科として使われているので、「診療科としての耳鼻咽喉科」という意味ですね。
ちなみに、「rendez-vous」は外来語の「ランデブー」の元になった単語ですが、病院などの「予約」という意味でよく使われます。
略語が普通の「ORL」
さて、前述通り「ORL」は医師としても診療科としても使われるので、他の医療関係の略語と同じ使い方なのですが、「ORL」だけは頭文字を3つつなげた略語です。
もちろん、「oto-rhino-laryngologue(耳鼻咽喉科医)」「oto-rhino-laryngologie(耳鼻咽喉科)」が長すぎるからというのが、その理由です。
ただしそれゆえ、他の略語とは異なり、正式名称で呼ぶことが極端に少なく、「ORL」と言うのが普通です。
そのため、例えば顧客や年長者などが相手でも、まったく失礼にならない略語です。
逆に、正式名称で言ってしまうと、フランス人ネイティブであっても、一瞬、何のことかわからなくなるかもしれないレベルなのです。
元はフランス語ではない?「ORL」
なお、「耳鼻咽喉」という意味の「oto-rhino-laryngo」の部分ですが、「oto」「rhino」「laryngo」がそれぞれ「耳」「鼻」「のど」を表していて、ギリシャ語由来です。
フランス語では、それぞれ「oreille(耳)」「nez(鼻)」「gorge(のど)」なので、かなり異なりますね。
実はこれまでご紹介してきた医療関係の略語も、そのほとんどがギリシャ語由来です。
ヨーロッパの医療のルーツが古代ギリシャなので、専門用語にギリシャ語が残ったというのが、その理由です。
ハイブリッドの象徴?
ところで、フランス語に限らず、欧米の略語などを見ていると、「漢字も悪くないよね!」と思うことがよくあります。
「ORL」のように頭文字だけになることが多いので、知らなければ絶対にわからない略語がよくあるからです。
日本語には漢字があるから、書いても読んでもコンパクトで、「耳鼻咽喉」を略語にせずに済んでいるわけです。
けれど実は、日本語の「耳鼻咽喉科」も、ラテン語やギリシャ語の構造をマネて、漢語を組み合わせて作った造語だと知り、驚きました。
その構造とは、「耳=耳」「鼻=鼻」「咽=のどの奥」「喉=のど」なのだそうです。
確かに、日本の医療は、西洋医学と漢方に加え、日本在来治療のいいとこ取りのような、ハイブリッドですよね!
「耳鼻咽喉科」という名前自体が、そうしたハイブリッドの象徴とも言えるのかもしれません。
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