若者言葉から昇格した略語
フランス語で話していると、仏和辞書などには載っていないような言葉も耳にします。
元は若い人たちが仲間内で使っていた略語などがほとんどですが、時間とともに社会的にも認知されて、多くの人が使うようになった言葉です。
かしこまった場では使わなくても、仲の良い同僚となら使う程度の略語や派生語などを中心にご紹介します。
今回はその第34回目「véto」です。
「véto」とは?
「véto」とは、「vétérinaire(獣医)」のことです。
「véto」という言い方にはなんとなく親しみがこもっていて、「獣医さん」のイメージです。
実はこの「véto」の元の単語「vétérinaire」には、「獣医学」という意味もあるのですが、なぜか「véto」に関しては、獣医を指していて、あまり獣医学の意味では使われません。
この点、このブログ・ポッドキャストでご紹介してきた他の医療に関係する略語「dermato(皮膚科医/診療科としての皮膚科)」「ophtalmo(眼科医/診療科としての眼科)」などとは異なります。
「動物のお医者さんだけはちょっと特別」と覚えておけば、混乱しなくて済みますね。
使用例
「véto」を使ったフレーズには、次のようなものがあります。
- Le véto a vacciné mon chien.
(獣医がわたしの犬にワクチンを打った)
- Mon chien est hospitalisé chez le véto.
(私の犬が入院した)
1つ目のフレーズの「vacciné」は「~にワクチンを接種する/予防注射をする」という意味の「vacciner」の過去分詞です。
「avoir」の現在形「a」とともに過去表現になっています。
2つ目のフレーズでは「入院している」ので、他の医療関係の略語なら、「en cardio(心臓科に)」など「en 〇〇」の形で診療科として使われるのですが、前述通り「véto」の場合は診療科を表しません。
「chez le véto(獣医さんのところに)」のように言うのが普通です。
なお、「hospitalisé」に関しては、2025年5月19日配信の【フランス語のフレーズ】日常会話で使う略語㉚で扱っています。
フランスならではの特殊事情
「véto」と呼ばれ、親しみやすいイメージのある獣医ですが、獣医学の専門知識や臨床経験を積んだ正式な医師です。
心理カウンセラーや歯科医のように、医師ではない有資格者というわけではありません。
それでも気軽に「véto」と呼ぶ存在なのは、フランスならではの特殊な事情も関係しているかもしれません。
というのもフランスでは、入院や高額治療を含めた医療費がほぼ無料であることが多いのですが、それは人間の医療費だけです。
ペットなどの動物のための医療費は、基本的に全額負担になります。
ペット保険などもありますが、かなり高額なので、入っていない人が大半だと思われます。
それでも生きている限り、やはり動物にも病気やけがなどは付きもの。
「véto」、獣医さんのところに駆け込むこともあるわけです。
すると、もちろん獣医さん側も事情をわかっているので、できるだけお金がかからない方法を考えてくれたり、それでも高額になる場合には、分割払いを提案してくれたりするわけです。
そもそも、大事な家族であるペットを病気から守ってくれたり、時には命を救ってくれたりしているうえ、支払いのことなどでも相談に乗ってくれる存在なので、余計に親しみがわくのだと思います。
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