若者言葉から昇格した略語
フランス語で話していると、仏和辞書などには載っていないような言葉も耳にします。
元は若い人たちが仲間内で使っていた略語などがほとんどですが、時間とともに社会的にも認知されて、多くの人が使うようになった言葉です。
かしこまった場では使わなくても、仲の良い同僚となら使う程度の略語や派生語などを中心にご紹介します。
今回はその第23回目「boîte」です。
「boîte」とは?
「boîte」とは、そもそもは「箱」を意味する女性名詞で略語ではありません。
「会社」「職場」という意味で使われますが、非常にくだけた表現です。
若者や親しい間柄で「働いている会社」を話題にする際によく使われます。
かなり以前から使われている言葉なので、「会社」「職場」の意味でも仏和辞書などに載っていることも多いのですが、使い方には注意が必要です。
使用例
「boîte」を使ったフレーズには、次のようなものがあります。
- Tu travailles dans quelle boîte ?
(どの会社で働いているの?)
「boîte」を「会社」「職場」の意味で使うのは、親しい間柄限定です。
フランス人ネイティブでこの表現がわからない人はまずいないとは思いますが、軽いスラングなので、目上の人や顧客相手に使うべきではありません。
目上の人や顧客相手なら?
そうした相手には、「どの会社で働いていますか?」と聞く際に、
- Vous travaillez dans quelle entreprise ?
または
- Vous travaillez dans quelle société ?
と言うべきです。
「entreprise」は「企業」「会社」を指す最も一般的で幅広い言葉、「société」は「会社」「法人」を意味し、特に法人格を持つ正式な組織を指すことが多いです。
なぜ「boîte」と言う?
もっとも、「boîte」を元の意味である「箱」や「缶」としての意味で使うなら、どのような相手でも全く問題ありません。
でもなぜ「boîte」を「会社」「職場」の意味で使うようになったのでしょうか?
「boîte」が「会社」「職場」の意味になる場合、ポジティブにもネガティブにも使われます。
「boîte」はスラングになりやすい
そもそも「boîte」は、親しみやすくて軽い口調のスラングとして使われることがあります。
例えば
- boîte de nuit
(ナイトクラブ)
のような言い方です。
「nuit(夜)」なので、「boîte de nuit」は直訳するなら「夜の箱」。
イメージそのものからできたスラングですよね。
オフィスの形
そして「boîte」が「会社」「職場」として使われるのは、オフィスの形が箱状に見えるから、という理由もあります。
「boîte de nuit(ナイトクラブ)」にも通ずる、「箱の中で仕事をしている」イメージです。
特に古い時代の小さな会社では、オフィスや作業場が本当に「小さくて狭い部屋」だったことがあり、そのイメージがスラング化して残った可能性があります。
詰め込まれている
ネガティブな要素としては、「boîte」という単語に対する象徴的なイメージが関係しています。
実は「boîte」は「箱」だけでなく、「缶」という意味もあります。
本来は「boîte de conserve」が「缶」という意味になるのですが、「boîte de maïs(コーンの缶詰)」「boîte de sardine(イワシの缶詰)」のように使われます。
特に「boîte de sardine(イワシの缶詰)」が「boîte」という言葉のシンボルのようになっている側面もあります。
つまり「boîte」という単語に(イワシの缶詰のイワシのように)「ぎゅうぎゅうに詰められている様子」が結びついてしまっているのです。
なので、「boîte」イコール「狭い場所にぎゅう詰めで働かされている」という皮肉が隠れている一面もあるのです。
ネガティブとは限らない
ただし、けっして皮肉だけではなく、ポジティブに使うこともよくあります。
- Tu travailles dans une bonne boîte ?
(いい会社で働いているの?)
目上の人や顧客相手に使うべきではありませんが、ネイティブならすべての年代の人がわかる表現で、親しい間柄ではよく使われるのが、「会社」や「職場」という意味での「boîte」です。
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