【フランス語のフレーズ】日常会話で使う略語㉒cuisto

フレーズ

若者言葉から昇格した略語 

フランス語で話していると、仏和辞書などには載っていないような言葉も耳にします。 

元は若い人たちが仲間内で使っていた略語などがほとんどですが、時間とともに社会的にも認知されて、多くの人が使うようになった言葉です。 

かしこまった場では使わなくても、仲の良い同僚となら使う程度の略語や派生語などを中心にご紹介します。 

今回はその第22回目「cuisto」です。 

「cuisto」とは? 

「cuisto」とは、「cuisinier」の略で、「調理師」「料理人」「コック」という意味です。 

元の単語「cuisinier」には女性形の「cuisinière」があり、発音も変わります。

「cuisto」は略語なので性別を区別せず、男性にも女性にもこのまま使われますが、あえて「(女性の)調理師」と言いたいなら、元の単語の女性形「cuisinière」が使われます。

フランス語の略語は語末を「o」で終わる形にすることが多いので、この形になったと思われます。 

使用例 

「cuisto」を使ったフレーズには、次のようなものがあります。 

  • C’est un cuisto prépare le repas de ce soir !
    (今日の夕食を作るのはプロの料理人だよ!)

このフレーズの「夕食」は、パーティー料理のようなごちそうのようですが、自分たちが食べるものを用意してくれるのはプロの料理人だという喜びが伝わってきます。

ただし「cuisto」という言い方には、若干の若者臭さが残っていて、年配の人が使う言葉ではない一面もあります。

このフレーズの場合、ホームパーティーや小さな会場での会食のような雰囲気があり、プロであっても、おそらくは有名な料理人ではないように思われます。

にもかかわらず、かなり有り難がられている様子です。

尊敬される「cuisto」

フランスには手仕事や伝統的な技能を重視する文化があるので、手を使う職業の、特に熟練者は尊敬されます。

このことについては、ブログ・ポッドキャストの【フランス語のフレーズ】日常会話で使う略語⑳mécanoでご紹介した通りですが、「cuisto」に関しては、一般的に手を使う職業が尊敬される理由に加えて、他の影響も受けています。

それは、世界的にも高く評価されているフランス料理の地元だから、という理由ももちろんあります。

特に腕のいい人なら、国際的にフランスの名声を高めていることもあり、尊敬されています。

三ツ星シェフと言われる人たちが、その代表的な例ですね。

でもこうした有名な料理人は、若者臭さの残る「cuisto」ではなく、本来の「cuisinier」や「cuisinière」と言われます。

「cuisto」という言葉には、どこか若者らしい親しみを込めた響きがあり、そう呼ばれる料理人は、とくに有名な店で働いていなくても、尊敬されている場合があります。

フランスでは料理が生活文化の中心にあって、食事そのものが「アート」として認識されている面があり、腕のいい料理人は「アーティスト」とも言える存在だと捉えられることが多いからです。

お気に入りの「cuisto」

つまりフランスでは、星付きなどの有名なレストランで働く料理人だけが、尊敬される存在なのではありません。

食べ慣れた伝統料理を出すような、街なかの小さな店であったとしても、心温まるようなおいしい一皿を出してくれる料理人なら、立派に尊敬に値する存在です。

そして決して有名ではない店で、おまけにわずかな工夫やアイデアであっても、それが評価されれば、尊敬の対象となることがあります。

ある時、料理人の知り合いが彼の友人を紹介してくれたことがあったのですが、その方はテレビによく出ているタレントさんでした。

周りにはたくさん人がいたのですが、そのタレントさんが知り合いの料理人のことを

  • Il est mon cuisto préféré !
    (彼は僕にとって一番お気に入りの料理人なんだ!)

と言ったのです。

決して有名ではない料理人本人が嬉しそうだったのは言うまでもありませんが、周りの人たちの彼に対する評価が一変した瞬間でした。

もちろん有名人がここまで言えば、日本でも似たような反応が起こると思いますが、フランス人の反応は、少し違うような気がします。

そもそも、自分ではできない手仕事に対して尊敬の念を抱く人が多い文化であることに加え、生活を豊かにしてくれるクリエイティブな仕事として認められているのが、フランスでの料理人です。

私が目撃したのは、この料理人の作った料理を食べたことのない人たちが、テレビで見る有名人によって尊敬されていることを知った瞬間でした。

このように若者が親しみを込めた「cuisto」という言葉は、料理人の技術だけでなく、仕事に対する姿勢や人間性までも評価する場合があるのです。

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