若者言葉から昇格した略語
フランス語で話していると、仏和辞書などには載っていないような言葉も耳にします。
元は若い人たちが仲間内で使っていた略語などがほとんどですが、時間とともに社会的にも認知されて、多くの人が使うようになった言葉です。
かしこまった場では使わなくても、仲の良い同僚となら使う程度の略語や派生語などを中心にご紹介します。
今回はその第20回目「mécano」です。
「mécano」とは?
「mécano」とは、「mécanicien」の略で、「自動車整備士」や「修理士」「機械工」という意味です。
元の単語「mécanicien」には女性形の「mécanicienne」があり、発音も変わります。
「mécano」は略語なので性別を区別せず、男性にも女性にもこのまま使われます。
「mécano」は略語として定着しているので、仏和辞書に載っていることも多いです。
フランス語の略語は語末を「o」で終わる形にすることが多いので、この形になったと思われます。
使用例
「mécano」を使ったフレーズには、次のようなものがあります。
- Mon mécano est super bien !
(うちの整備士さんはすごくいいんだ!)
このフレーズの場合は「super(すごい)」を使っているので、「mécano」という言い方も相まって、かなりくだけた表現になっています。
「mécano」になるには?
ただしフランスでは、「mécano」と呼ばれる人たちのうち、特に腕のいい人は尊敬の対象になっていることが多いように感じられます。
フランスは日本よりも学歴社会だと言われ、実際に住んでいてもそう思います。
でも「mécano」つまり「自動車整備士」「修理士」「機械工」という職業に就いている人たちは、必ずしも高学歴ではないのです。
始めから資格を取って「mécano」になる人たちもいますが、未経験の若者が見習い制度を使って、働きながら資格取得を目指す人がたくさんいます。
フランスにはこうした見習い制度がとても普及しているので、働いてお給料をもらいながら学校に通えるのです。
尊敬され感謝される「mécano」
なのでもちろん一人前の「mécano」なら資格は持っているのですが、いわゆる高学歴でなくても、一般的に素晴らしい職業だと評価されているのが「mécano」です。
それは多くの人にとって、日常生活で必要な車や機械を修理して、トラブルを解決してくれる「mécano」は、自分ではできない技術を持った人だと思われて、感謝されていることも事実です。
でもそれだけなら、日本の整備士さんたちも、多くの人が持っていない技術でトラブルを解決してくれているはずです。
フランスで独特なのは、手仕事や伝統的な技能を重視する文化があることです。
手を使う職業は、特に熟練者は尊敬を集めます。
そして手作業で問題を解決する職業は、頭脳労働と同じか、あるいはそれ以上の価値を持つと考えられることもあるのです。
歴史やメディアも影響
さらにフランスには、労働者階級や実務的な仕事をする人たちを尊敬する、社会的な傾向があります。
それはフランス革命以来の、労働者階級の権利や尊厳が重要視されてきた歴史があるからです。
「mécano」の仕事は、学歴や地位の有無にかかわらず、技能と実績で評価されています。
おまけに、映画や小説・ドラマでも、整備士や技術者は「誠実で頼りになる人」として描かれることが多い仕事です。
こうした歴史や描写が、社会的イメージを作っているように思われるのです。
ひどい学歴社会ではあるけれど、それだけではないのがフランス社会です。
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