外国語だから不思議!
今回ご紹介するのは、ある条件が重なると変化する、不定冠詞の「des」についてです。
不思議な変化ではあるのですが、よく考えてみると日本語でも似たようなことが起こっています。
ネイティブは気づかずに使っているけれど、外国語として触れると疑問に思う変化をご紹介します。
不定冠詞「des」
ごく初歩的なことながら、3つある不定冠詞について復習しておきます。
単数男性形が「un」、単数女性形が「une」、そして今回扱う複数形は「des」です。
なお、前置詞の「de」と定冠詞複数の「les」が合わさった形も「des」で、全く同じスペルと発音であるものの、別の単語なので、今回のような変化はしません。
あくまでも、不定冠詞複数形の「des」だけが変化します。
形容詞「long(長い)」の変化
先日(2025年1月15日)配信した、ブログ・ポッドキャストの【フランス語版 星の王子さまのフレーズ】第373回で、名詞の前にも後にもつく形容詞「long(長い)」を扱いました。
その中でこの形容詞の男性形と女性形を、「voyage(旅)」という名詞とともに、単数・複数両方でご紹介しています。
【男性形単数】(long)
- un long voyage(長くて〇〇な旅)
- un voyage long(長旅)
【女性形単数】(longue)
- une longue journée(長くて〇〇な1日)
- une journée longue(長い1日)
【男性形複数】(longs)
- de longs cheveux(長くて〇〇な髪)
- des cheveux longs(長い髪)
【女性形複数】(longues)
- de longues heures(長くて〇〇な時間)
- des heures longues(長時間)
語順に注目!
この第373回では、「long(長い)」が名詞の前についた場合と後ろについた場合ではニュアンスなどが変わることを中心に扱いましたが、今回注目するポイントは、男性形・女性形両方の「複数」です。
「長くて〇〇な」という意味になる「形容詞 + 名詞」の方に注目すると、男性形・女性形の両方で不定冠詞が「de」になっています。
【男性形複数】(longs)
- de longs cheveux(長くて〇〇な髪)
- des cheveux longs(長い髪)
【女性形複数】(longues)
- de longues heures(長くて〇〇な時間)
- des heures longues(長時間)
変化が起こる条件とは?
これは不定冠詞の「des」が前置詞の「de」になったわけではなく、ただ単に文法上のルールで「de」という形になったものの、品詞としては不定冠詞のままです。
この変化が起こる条件は、次の通りです。
- 「形容詞 + 名詞」の語順であること
- 複数形であること
意外に目にする変化
フランス語の形容詞は、名詞の後に付くのが普通ですが、中には名詞の前に付いたり、後に付いたりするものがあります。
名詞の前につく形容詞は少数派であり、さらに複数限定なので、それほどひんぱんには起こりそうもないように感じるかもしれませんが、名詞の前につく形容詞は数は少なくとも、使用頻度の高い基本的な語いが多いので、意外に目にする機会があるものです。
「long(長い)」だけでも、たくさんありますよ!
- de longs cheveux(長くて〇〇な髪)
- de longues heures(長くて〇〇な時間)
- de longs chemins(長くて〇〇な道のり)
- de longues périodes(長くて〇〇な期間)
- de longs échanges(長くて〇〇なやり取り)
- de longues jambes(長くて〇〇な脚)
- de longues prières(長くて〇〇な祈り)
変化の理由
このタイプの「des」から「de」への変化は単なる文法上のルールで、理由の説明は難しいのですが、しいて言うなら音の問題です。
「des」の後すぐに名詞が来るならいいのですが、形容詞が来るとスムーズに発音しにくい感じがするのです。
そのため、単なる「長い髪」という意味の「des cheveux longs」は「名詞 + 形容詞」の語順なので「des」のままですが、「長くて〇〇な髪」という意味の「de longs cheveux」は「de」に変化します。
- de longs cheveux 形容詞 + 名詞
- des cheveux longs 名詞 + 形容詞
日本語も同じ?
ちなみに、わたしはフランス人に日本語を教えているのですが、この「des」から「de」への変化という不思議なルールを、日本語の不思議なルールへの言い訳として使うことがあります。
それは「なぜ『かんづめ』や『まきずし』と言うのか?」という質問に対してです。
日本語ネイティブとしては、「かんづめ」を「かんつめ」とは言わず、「まきずし」を「まきすし」とも言いません。
「缶につめている」のだから「かんつめ」でも良さそうですし、「巻物のすし」なので「まきすし」という方が、理にかなっているはずです。
でも発音しにくいから、という以外には理由がないのです。
「de longs cheveux」になるのも、同じ理由です。
フランス人ネイティブのおそらく全員が、意識せずに「des」を「de」に変えています。
日本人ネイティブが何の疑問も持たずに「かんづめ」「まきずし」と言っているのと同じですよね!
この記事を音声で聞くなら
この記事は、ポッドキャストでも配信しています。
下のリンクのクリックで該当するエピソードに飛びますので、発音の確認などにお使いくださいね!
コメント