見分けられないと間違える?
文法用語である「補語」という言葉、正しく理解できていますか?
「~に」になるのは補語と間接目的語の2つがあるので、役割を見分けられないと混同します。
フランス語では、補語なのか間接目的語なのかで変化する部分があるので、やはり見分ける必要があります。
冠詞のない理由
先日(2025年2月18日)配信した、ブログ・ポッドキャストの【フランス語版 星の王子さまのフレーズ】第388回で「Ne pars pas, je te fais ministre !(出発するな、君を大臣にする!)」というフレーズを扱いました。
この回では主に動詞に注目したのですが、今回注目するのは「ministre」という名詞の方です。
「ministre」は男性名詞で意味は「大臣」ですが、冠詞がないことにお気づきでしょうか?
フランス語は、どんな名詞にも冠詞をつけたがる言語と言ってもいいほどなので、冠詞がないということは、それ相当の理由が必要になります。
このフレーズでの「ministre」は、職業の名前や地位を表す補語、というのが冠詞がついていない理由です。
省略しない場合も
ただし、職業の名前や地位を表す名詞なら、すべて冠詞を省略するわけではありません。
あくまでも「職業の名前や地位を表す補語」だけです。
同じ「ministre(大臣)」という名詞でも、主語や目的語として使われれば、冠詞がつきます。
- Je te fais ministre.
(君を大臣にする)
- Je parle au ministre.
(大臣に話す)
日本語ではどちらも「大臣に」になる部分ですが、1番のフレーズに冠詞はなく、2番には「au」がついています。
「au」は前置詞の「à」と定冠詞単数男性形の「le」が合わさったものなので、冠詞がついています。
補語との戦い?
同じ「大臣に」という意味なのに、何が違うのでしょうか?
それこそが、補語と間接目的語の違いです。
先ほどの例なら、1番が補語なので冠詞は不要、2番は間接目的語なので冠詞が必要、という論理です。
実は私自身、長い間このことを知らずにいて、試行錯誤してしまっていました。
2番の間接目的語はすぐに納得できたのですが、1番の「補語」という存在が腑に落ちず、不要な冠詞を付けたりしていたのです。
スッキリ理解するために
補語と間接目的語の違いをハッキリさせるには、職業の名前や地位などの名詞が何を表しているかが大切です。
- 「状態」を表す=補語 → 冠詞不要
- 「対象」を表す=間接目的語 → 冠詞が必要
先ほどの例なら、
- Je te fais ministre.
(君を大臣にする)
⇒ 大臣という新しい「状態」にする
- Je parle au ministre.
(大臣に話す)
⇒ 大臣という「対象」に話す
ということなので、名詞が「状態」になっているのか、「対象」になっているのかが重要です。
動詞も関係する
日本語だとどちらも「~に」になるので、和訳からスタートしてしまうと補語と間接目的語の違いはわかりにくくなります。
でもフランス人ネイティブは、ほとんど意識しないで冠詞をつけたり、つけなかったりしています。
「ネイティブなんだから、当たり前でしょ!」と思われるかもしれませんが、ちゃんと理由があります。
実は「補語を導きやすい動詞」があるので、こうした動詞の後に職業の名前や地位などの名詞が来れば、冠詞をつけないのです。
補語を導きやすい動詞の代表格とも言えるのが、先ほどから何度も登場している「faire」です。
その他には、
- nommer(任命する)
- élire(選出する)
- désigner(指名する/指定する)
- juger(判断する)
などがあります。
こうした動詞は、人や物を別の状態や役割に変えたり、もしくはみなすという意味を持っているのが特徴です。
- Nous l’avons nommé chef.
(私たちは彼をリーダーに任命した)
- Ils m’ont élu président.
(彼らは私を大統領に選んだ)
- Il l’a désignée responsable du projet.
(彼は彼女をプロジェクトの責任者に指名した)
- Ils l’ont jugé coupable.
(彼らは彼を有罪とみなした)
フランス語らしさに近づこう!
あくまでも論理的なのがフランス語なので、どこまでもロジックがつきまといます。
ため息が出てしまいますが、ため息をつくネイティブも多いので、間違って当たり前です!
また、ネイティブたちは特に考えもせずに、冠詞を使い分けたり、そもそも付けなかったりしています。
もちろん慣れているからなのですが、今回ご紹介したような内容、つまり名詞が「状態」と「対象」のどちらを表しているのか、どんな動詞に導かれているのかなどを考える癖がついているのです。
でも、これは別にスゴイことではありません。
私たち日本人も、外国人の日本語学習者が苦労する、助詞の使い分けなどを難なくこなしています。
もちろん慣れなのですが、日本語の助詞に関しても、日本語独特の使い分け方があります。
要するに、フランス語を勉強するならフランス語方式の考え方を身につけるのが近道で、日本語で苦労するなら日本語方式のやり方をするのが正解です。
補語と間接目的語の関係を理解することは、フランス語らしさに近づくチャンスでもあると、わたしは思っています。
この記事を音声で聞くなら
シリーズ【フランス語版 星の王子さまのフレーズ】は、ポッドキャストでも配信しています。
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