実は似ている?
「ウサギ」は身近な動物ですが、日本ではペットとして、フランスでは食肉として捉えることが多いと思います。
フランス語のウサギの扱いを見ていると、他の動物とは異なる点があり、ずっと不思議に思っていました。
でも調べてみると、意外なことに日本での扱いと似ている点があったのです。
30年で激変した食習慣
「食べ物に関しては保守的」と言われていたのに、今やほとんどの人が「sushi」を食べるようになったのが、現在のフランスです。
わたしが南フランスに来た1990年代後半頃は「日本人って生の魚を食べるんでしょう?」と、気持ち悪そうに言ってくる人が1人や2人ではなかったので、隔世の感があります。
当時はフランス語で言い返すのも難しく、悔しい思いをしたこともありました。
でも次第に「わたしだって、フランス人がカタツムリやカエルを食べるって知った時は、本当に驚いたのよ!」ぐらいは言えるようになって、ラクになりました。
相手が自分の食べないものを食べるからと言って否定的な反応をするのは、異なる文化を尊重できない幼稚な態度だと、私は思っています。
見たくはない光景
でもそれを十分にわかっているつもりでも、実際にスーパーの精肉コーナーに行くと、あまり見たくはない光景があります。
それは頭つきのウサギ肉が売られているからです。
専門店である肉屋さんだと、頭や羽根つきのニワトリまで売っていますが、ウサギに関しては、スーパーでさえ頭つきなのです。
ウサギ肉に関しては、ホームパーティーなどで出されれば食べますが、自分で買ったり料理したりは、いまだにできず、今後もするつもりはありません。
viandeとvolaille
ところで、わたしが目を背けるように通り過ぎるウサギ肉コーナーは、どのスーパーでも鶏肉やカモ肉などの隣にあります。
フランス語で「肉」を意味する単語に「viande」がありますが、鶏肉・カモ肉・ウサギ肉などは「volaille」と呼ばれ、別扱いなのです。
「viande(肉)」コーナーには、牛肉・豚肉・仔牛肉・仔羊肉などが並んでいるのですが、それとは区別されます。
「volaille」は和訳すると「家禽(かきん)」という単語になります。
あまりなじみのない言葉ですが、ニワトリ・カモ・七面鳥・ウズラなどの鳥類とともに、ウサギも含まれます。
「bête」とは?
なお、食用の肉としての単語である「viande」とは別に、「動物」「けもの」「家畜」「(小さな)生物」「虫」という意味の「bête」という名詞もあります。
「bête」に関しては、ブログとポッドキャストの【フランス語版 星の王子さまのフレーズ】というシリーズの第365回で扱いました。
「bête」は意味の広がりがあることばですが、食用となる「家畜」という意味もあり、牛や豚などの四つ足の動物のことを指します。
ウサギの仲間
でも同じ四つ足動物なのに、ウサギは「bête」ではなく、あくまでも「volaille」の1種なのです。
理由としては、ウサギもニワトリやカモなどのサイズに近いこと、調理方法も似ているからだと言われるそうです。
確かに、ウサギ肉の味は鶏肉や七面鳥肉に近く、カモ肉よりも鶏肉や七面鳥肉寄りだと思います。
自分では料理したことも、今後するつもりもありませんが、似たような料理法だと思われるのです。
日本でのウサギ
…とここまで、フランスでのウサギの扱いについてご紹介しましたが、現在の日本でウサギと言えば、「ウサギカフェ」に代表されるような、ペットとしての動物ですよね?
でも日本語でウサギを数える場合、「1匹・2匹…」ではなく、正式には「1羽・2羽…」なのを知っていますか?
これもフランス語でのウサギの扱い同様、ずっと不思議に思っていたことでした。
でも調べてみると、この「1羽・2羽…」の数え方は、食用としてのウサギの扱いによるものでした。
これは昔、仏教で肉食が禁じられていた影響で、ウサギを「鳥」として扱ったからだと言われているそうです。
異なる理由・同じ結果
フランスではサイズや調理方法が似ているから、日本では肉ではないと言い訳するために、鳥類と一緒に扱われたウサギ。
理由は違っても、同じ結果になっているのが興味深いところです。
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