169 あってもなくてもいい? C’est très utile, si l’on est égaré pendant la nuit.

その他(王子さま)

無用の長物かも? 

今回のフレーズには、例えなかったとしても、意味上は何の支障もない言葉が入っています。 

本当になくてもいいのか、また、なくてもいいのだとすれば、なぜ入っているのかをお伝えします。 

このフレーズの場所と背景 

では、単語に入る前に、今回のフレーズ、「C’est très utile, si l’on est égaré pendant la nuit.」の場所と背景を確認しておきます。 

このフレーズは、第1章の後半にあります。 

3枚目の挿絵から2つ目の段落の最後のフレーズです。 

「c’est très utile」 

「c’est」は、「これ(それ・あれ)」を意味する「ce」と、êtreの活用形「est」が合わさってできています。 

「très」は「とても」を意味します。 

「utile」は「役に立つ」という意味です。 

「si l’on est égaré」 

「si」は「もしも」、「l’on」は「l’」と3人称代名詞単数の「on」で、主語としての「人」を表すのが、基本的な働きです。 

特殊な人称代名詞で、「人」が誰を表すのかは、文脈によって変わります。 

「私」「私たち」「あなた」「あなたたち」「彼/彼女」「彼/彼女たち」すべての意味になり得るうえ、一般的な意味での「人」「人々」になることがあります。 

詳細はこのシリーズの第93回を参照してください。 

「est」は、êtreの活用形です。 

「égaré」は、「(人を)道に迷わせる」などの意味の動詞「égarer」の過去分詞です。 

「est(être)+(動詞の過去分詞)」で、受動態です。 

なので、「si l’on est égaré」で「もしも道に迷ったら」という意味になります。 

「pendant la nuit」 

「pendant」は、「~の間に」を意味する前置詞、「la」は定冠詞単数女性形、「nuit」は女性名詞で、「夜」「夜の間」という意味です。 

「pendant la nuit」で、「夜間」ということになります。 

背景を見てみると 

語り手の男性は、6歳で画家になるのはあきらめ、結局飛行機の操縦士になりました。 

周囲の大人たちに他の勉強をするようにと言われ、不本意ながらもそれに従ったのですが、地理を学んだことに関しては、いくつものメリットがあったようです。 

今回のフレーズも、地理の知識が役立ったことについて語っている場面です。 

スルーしたもの 

ところで冒頭でも触れたとおり、今回のフレーズには意味を持たない言葉が入っていて、実は単語の説明の際にも、これをスルーしてしまっています。 

お気づきでしょうか? 

それは「si l’on est égaré」の中にある「l’」の部分です。 

「l’on」は「l’」と3人称代名詞単数の「on」であることには触れましたが、「l’」が何なのかは、あえて無視しています。 

なぜつける? 

「l’」は意味を持たない言葉なので、単語の説明の中で触れなくても、意味には影響がなかったですよね? 

でも「l’」を見て、「定冠詞の省略形だな!」と思った方は、かなり残念! 

「on」は人称代名詞なので、直前に冠詞がつくことはないのです。 

ここでの「l’」は、ただ単に「音を整えるためだけ」につけられています。 

日本語にも存在する! 

「音を整えるために何かを足す」というのは、省略するのが大好きな言語である日本語で話していると、ちょっと違和感があるかもしれません。 

でも、日本語にも存在します。 

例えば、濁点です。 

「巻きずし」や「かんづめ」は、もとは「巻き + すし」「かん + つめ(る)」なので、濁点がありません。 

つまりここでの濁点は、「音を整えるために足されたもの」ということです。 

私は本業が日本語教師なのですが、こうした濁音を理解できない学生が、必ずいます。 

でも「l’on」の話しをすると、「ああ、そうか!」と、パッと顔が明るくなります。 

日本語とフランス語で音の感覚は違うのですが、「音を整えるために足されたもの」という意味では、似ているのではないかと思っています。 

「l’」をつけるのは? 

最後に、今回のフレーズではなぜ「l’」がついて「l’on」になっているのかについて触れておきます。 

それは、直前に「si」があるからです。 

「si」の他、「qui」「quoi」「ou」のように、母音で終わる単語のすぐ後に「on」が来る場合には、「l’on」になります。 

また逆に、「on」が文頭にあるなら、「l’」はつきません。 

ルールは他にもいくつかあるのですが、規則を覚えるというよりも、少しずつ慣れる方が、おススメです。 

この記事を音声で聞くなら 

シリーズ【フランス語版 星の王子さまのフレーズ】は、ポッドキャストでも配信しています。 

下のリンクのクリックでこの記事に該当するエピソードに飛びますので、発音の確認などにお使いくださいね!

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