なぜ扱わない?
今回はあえて、フレーズの一部分のみを扱うことにしました。
残りを扱わないのは長文だからではなく、私自身の失敗への反省に基づいています。
このブログを読んだり、ポッドキャスト配信を聞いたりしてくださっている方には、私のような失敗を繰り返してほしくないんですよね!
このフレーズの場所と背景
では、単語に入る前に、今回のフレーズ、「Je corrige donc ma dédicace : À LÉON WERTH」の場所と背景を確認しておきます。
このフレーズは、第0章とも言うべき、献辞部分(「À LÉON WERTH」と書いてあるところ)の最後のフレーズの前半部分です。
「je corrige」
「je」は、「わたし」を意味する人称代名詞1人称単数です。
「corrige」は動詞「corriger」の1人称単数現在の活用形で、「直す」「修正する」という意味です。
「donc ma dédicace」
「donc」は、「それゆえ」「したがって」という意味です。
「ma」は所有形容詞1人称で単数の女性形で、「私の」「僕の」「オレの」という意味です。
「dédicace」は女性名詞で、「献辞」という意味です。
このシリーズの第150回と第151回では、「献じる」「捧げる」という意味の動詞「dédier」を扱いましたが、その関連単語です。
「À LÉON WERTH」
「LÉON WERTH」は、作者の親友の名前で、「À LÉON WERTH(LÉON WERTH へ)」ということです。
ここではあえて、すべて大文字表記になっています。
背景を見てみると
『星の王子さま』を親友に捧げるにあたって、作者は子どもたちに謝り、この作品を大人に捧げる3つの理由を述べ、さらには(大人である現在の親友ではなく)、子どもであった頃の親友に贈りたいと言いました。
なぜなら、すべての大人はかつて子どもだったからです。
そしてこの献辞の最後が、今回のフレーズです。
ただしこのフレーズには続きがあり、「少年だった頃の」という意味になっているのですが、ここで扱うのは前半部分のみです。
混乱と挫折
では、なぜこのフレーズの後半部分を扱わないのかというと、冒頭で触れたとおり、私自身がこれで失敗しているからです。
例えば今回のフレーズなら、扱わない部分にあるのは、わずか5つの単語だけ。
しかも原因になっているのは、たった1つの動詞のみです。
でもこの動詞のせいで、私は混乱してしまうことになり、結果的には挫折しました。
やさしいフランス語?
『星の王子さま』という作品は、確かにやさしいフランス語で書かれていて、小学校高学年の子どもなら、何の問題もなく読めるレベルです。
でもだからと言って、お話しの順番にしたがって外国人が読み進めると、私のように失敗する人が多いと思うのです。
やはりネイティブの小学生と、外国人の大人の入門学習者が同じであるはずはありません。
ネイティブの小学生、しかも高学年なら、自分の言いたいことが言えない子はまずいなくて、外国人の入門学習者とは、比較できないレベルに彼らはいるのですから。
日本語の昔話
これは日本語で書かれた童話の冒頭だけを考えても、お分かりいただけるかと思います。
よくある昔話は、「昔むかしある所に、おじいさんとおばあさんがいました。おじいさんは山へ芝刈りに、おばあさんは川へ洗たくへ行きました」というものですよね?
日本語なら、この2つのフレーズの動詞「~いました」と「~行きました」は、主語が変わっても、時制が変わらなければ変化しません。
フランス語にすると?
でもフランス語なら、「おじいさんとおばあさん」という主語が「わたし」になったり、「あなた」になったり、「おじいさん」だけになったりした時点で、すべて変わります。
もちろん、「わたしたち」や「あなたたち」になっても変わります。
さらに動詞ごとに異なる変化もするので、段階を踏まずに触れてしまうと、混乱するのです。
ネイティブの言語獲得
ネイティブの子どもの場合、こうした時制の変化は耳で覚え、自分でも使うようになって、音として自然に定着してしまいます。
主語によって変化が異なる動詞も、実はスペルが違うのに、発音が一緒という場合がかなりあります。
幼少期に耳で覚えたネイティブは、小学校に入ってから「音は同じでも書く時は違う」ということを叩き込まれます。
外国人の場合
私たち外国人が、大人になってからこのステップを踏むのは、かなりやっかいであり、効率も落ちてしまいます。
ですので、始めのうちはやはり、扱う動詞の時制を制限し、その範囲内で十分に慣れてから時制を増やす方が、近道だと思うのです。
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シリーズ【フランス語版 星の王子さまのフレーズ】は、ポッドキャストでも配信しています。
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