フランス語用の脳トレに?
最初にお断りしておきますが、今回の内容は入門レベルではありません。
でも、論理的と言われるフランス語の、脳トレになるので扱うことにしました。
ネイティブでも間違える人が多いレベルの内容なので、ネット上などで日本語での情報は少ないです。
なお数字に関しては、後日複数回にわたってまとめる予定です。
このフレーズの場所と背景
では、単語に入る前に、今回のフレーズ、「C’est comme cinq cents millions de grelots…」の場所と背景を確認しておきます。
このフレーズは、第27章の始めにあります。
第27章の2つ目の段落の最後にあるフレーズで、語り手の男性が思っていることです。
「c’est」
「c’est」は、「これ(それ・あれ)」を意味する「ce」と、être の3人称単数の活用形「est」が合わさってできています。
意味は「これ(それ・あれ)は~です。」
「comme」
ここでは「比較のcomme」で、「~のように」「~のような」という意味です。
他に「感動のcomme」という使い方もあります。
「cinq cents millions de grelots」
「cinq cents millions」は数字で、日本の表記では「500,000,000」です。
つまり、「5億」ですね。
「de」は前置詞で、ここでは名詞の補語を導く働きをしています。
「~の~」という意味です。
「grelots」は、「鈴」を意味する男性名詞「grelot」の複数形です。
「cinq cents」
「cinq」は「5」、「cents」は複数形の「100」です。
「100」なら単数形の「cent」、「200」なら複数形の「cents」が使われるのですが、この単数形と複数形の関係は、かなりやっかいです。
これに関しては、後で深掘りします。
「millions」
「millions」は、「1,000,000(百万)」を意味する「million」の複数形です。
ここでは、「cinq cents(500)」が前についているので、複数形が使われています。
背景を見てみると
王子さまとの別れから6年が経ちましたが、語り手の男性は、やはり王子さまを思い続けています。
男性が確信しているのは、王子さまが自分の星に戻ったということ。
別れの晩、男性は王子さまが音もなく砂漠の砂の上に倒れたのを目撃しましたが、次の日の朝には王子さまの身体がなくなっていたからです。
そして6年後の現在、男性は夜空を見上げて、星を「聞く」のが好きだと言っています。
その理由が、今回のフレーズです。
フランス語の数字表記
ところで、先ほど「cinq cents millions」は、日本の表記では「500,000,000」だとご紹介しましたが、フランス語の数字表記の場合は、「500.000.000」または「500 000 000」になります。
日本の表記の「,(カンマ)」の部分が、「.」またはスペースになるのです。
ちなみに、小数点は「,(カンマ)」になるので、日本の表記とまったく逆になります。
ケタ数の多い数字の読み方
フランス語でケタ数の多い数字を読むのは、単位に「万」があることで、カンマ(「,」)がズレてしまう日本語よりもラクです。
ここでは、「5.000.100」を読んでみましょう。
- まず左から、1つ目の「.」よりも前にある数字(ここでは「5」)を読みます。
- 数字全体を見ると「.」が2つあるので、「million(s)」を読みます。
- 左から1番目と2番目の「.」の間には「000」になっているので飛ばします。
- 2番目の「.」の後の「100」、つまり「cent」を読みます。
- 「5.000.100」の発音は、「cinq millions cent」です。
対照的な「百」と「百万」
さてここからは、ネイティブのフランス人でも間違える人が多い、数字のアルファベット表記について深掘りしていきます。
かなりややこしいので、今回は扱うフレーズにある「cent(百)」と「million(百万)」だけにしますが、この2つは対照的といってもいいほど、異なります。
「million(百万)」は名詞!
では、まずは「million(百万)」から。
「million(百万)」は、フランス語では名詞で、例外的な扱いです。
この例外は他にもありますが、名詞なので、百万ちょうどでも「un million」つまり「1百万」のように扱われます。
日本語でも、必ず「1万」と言い、「万」だけにはならないのと同じ理屈です。
ただし、日本語の場合は「1万」と言うからといって他への影響はありませんが、フランス語では影響する場合があります。
「cent(百)」は複雑
「100」を意味する「cent」は、複数形を使う・使わないの規則がけっこう複雑です。
まず、「cent(百)」「deux cents(二百)」なら通常通り、単数には単数形を、複数には複数形を使います。
けれど、本来なら複数形になるべきである「二百」などの後に、他の数字が続く場合には、なぜか単数形になってしまうのです。
複数なのに単数形を使う「百」
複数形になるべきである「二百」などの後に、他の数字が続いて、「cent(百)」が単数になる場合の例をご紹介します。
- 203: deux cent trois
- 501: cinq cent un
- 940: neuf cent quarante
「cinq cents millions」
今回のフレーズにある「cinq cents millions」には、「五百」の後に他の数字が続いているのに、「百」が複数形になっています。
先ほど、複数形になるべきである「二百」などの後に、他の数字が続けば、「百」が単数になるとご紹介したばかりですが、例外なのです。
犯人は「million(百万)」!
この場合の犯人は、「million(百万)」です。
複数形になるべきである「二百」などの後に、他の数字が続けば、「百」が単数になるのですが、「million(百万)」は名詞なので、数字として扱われていないのです。
フランス語の数字は、ほとんどが形容詞として扱われているので、名詞である「million(百万)」は例外とされ、その結果、「cinq cents millions」のように、単数形になるべきものが複数になったままということに。
美しいシーンを台無しにしてごめんなさい!
「s」がついてもつかなくても、発音には変わりがないので、ネイティブでも間違える人が続出するわけです。
個人的には、日本語の「私は」の「は」を、「わ」と書いてしまう人が多いのと、似ているのではないかと思っています。
星の輝きを鈴の音として「聞く」という、美しい描写のシーンなのに、発音するわけでもない「s」の有無などという、重箱の隅をつつくような内容にしてしまって、すみません!
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シリーズ【フランス語版 星の王子さまのフレーズ】は、ポッドキャストでも配信しています。
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