マイペースな王子さま
同じ意味の単語が繰り返される、今回の2つのフレーズ。
それぞれ理由があって繰り返されていますが、その意図は伝わりません。
王子さまは、あくまでもマイペースなのです。
このフレーズの場所と背景
では、単語に入る前に、今回の「Je suis sérieux, moi.」と「La troisième fois… la voici !」の場所と背景を確認しておきます。
この2つのフレーズは、第13章の始めの方にあります。
挿絵から少し下がったところに、ビジネスマンが長く話す部分があるのですが、その中にあるフレーズです。
第13章では、王子さまと、訪問先のビジネスマンとの会話が続きます。
今回のフレーズは、ビジネスマンのセリフです。
「je suis ~」
「je suis ~」の意味は「わたし(僕・オレ)は~です」。
「je」
- 1人称代名詞単数
- 「わたし」「僕」「オレ」などに相当
「suis」
- 英語の be動詞に相当する、être動詞の1人称単数の活用形
- 意味は「~です」
- 「suis」の主語になるのは、「je」のみ
「sérieux」
「sérieux」は、人に対して使うなら「まじめな」「勤勉な」「熱心な」「誠実な」「真剣な」、事柄について使うなら「重大な」「深刻な」「顕著な」という意味です。
「sérieux」の女性形は「sérieuse」で、発音が変化します。
女性形の語尾の「s」は、音が「z」になるので、注意してください。
「moi」
文法上は1人称代名詞の単数です。
意味は「私」ですが、同じ1人称代名詞単数の「je」の強勢形と言われる形です。
「la」
「la」は、文法上、定冠詞の女性・単数です。
「troisième」
「troisième」は「第3の」という意味です。
「3ème」と書かれることもあります。
「fois」
「fois」は「~度」「~回」という意味の女性名詞です。
「voici」
「voici」は「これが~である」「ここに~がある」「ここに~がいる」という意味です。
「わたし」が2つあるのは、なぜ?
「Je suis sérieux, moi.」の「je」と「moi」は、両方とも「わたし」です。
これが繰り返されるのは、なぜでしょうか?
それは、強調しているからです。
「sérieux」を「真剣な」という意味に捉えるなら、「わたしは真剣なんだ、わたしは!」という感じですね。
「la」が2つあるのは、なぜ?
「la voici」の「la」も、「la troisième fois」の「la」同様、定冠詞です。
これは「la troisième fois」を指しているために女性形になっています。
背景を見てみると
王子さまの訪問を少しも喜んでいないビジネスマンですが、このフレーズの少し前から長々と話しています。
それは、自分が仕事を中断させられた様子についてです。
全部で3回あり、1回目はどこからともなく飛んできた虫、2回目は自らの運動不足が招いたリューマチの痛み、そして3回目が…と言っている部分が、今回のフレーズです。
伝わらない意図
自分の仕事に忠実で、ビジネスマンにとっては、王子さまはジャマな存在でしかありません。
そこで「Je suis sérieux, moi.」と、「わたし」を繰り返したり、50年以上の期間中で3回だけ起きた「仕事の中断」をアピールしたりしています。
ビジネスマンは「迷惑している」と言っているのですが、王子さまは、ビジネスマンがつぶやいた数字に興味を持ってしまっています。
自分の意図が王子さまに伝わることがないと悟ったビジネスマンは、このフレーズの後、仕方なく王子さまの相手をすることになります。
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