日本人には違和感?
今回のフレーズには、このシリーズで何度かお話ししている「c’est ~」という言い方と、その否定形である「ce n’est pas ~」という言い方の両方が入っています。
両方の「~」には、人・モノの両方が入るのですが、このフレーズの片方には人、もう片方にはモノが入っているので、まとめて覚えるのにピッタリです。
このフレーズの場所と背景
では、単語に入る前に、今回の「Mais ce n’est pas un homme, c’est un champignon !」の場所と背景を確認しておきます。
このフレーズは、第7章の後半にあります。
第7章では、王子さまと語り手の男性の会話が続き、最後はバラの花の絵で終わっています。
今回のフレーズは、後半にあるセリフ「– Un quoi ?」の直前にある、王子さまのセリフです。
なお、このフレーズは前回(第33回)扱った « Je suis un homme sérieux ! Je suis un homme sérieux ! » の後にあります。
「mais」
「mais」の基本的な意味は「しかし」「けれど」で、逆説を表します。
「c’est」と「ce n’est pas」
この2つの関係は、「ce n’est pas」は「c’est」で始まるフレーズの否定文ということです。
「c’est」
「c’est」は、「これ(それ・あれ)」を意味する「ce」と、英語の be動詞に当たる動詞 être の3人称単数の活用形「est」が合わさってできています。
意味は「これ(それ・あれ)は~です。」
「ce n’est pas」
「ce n’est pas」 は、「ce」と否定の「ne ~ pas」、そして「~」の部分に「est」を入れた形です。
「ne」と「est」は結合して「n’est」になっています。
意味は「これ(それ・あれ)は~ではありません」です。
「un」
「un」は、不定冠詞男性単数形で、特定できないものを指すときに使われます。
「homme」
「homme」は「人/人間」「男/男性」を意味する男性名詞です。
「人/人間」は動物ではない、「男/男性」は女性ではないという意味で使います。
「champignon」
「champignon」は、男性名詞で「キノコ」を意味します。
このフレーズでは単数形で登場していますが、多くの場合は複数形の「champignons」で使われます。
単数・複数形の発音は同じです。
フランスでは成長が早いものの代名詞でもあるのがキノコ。
子供の成長が驚くほど早い様子を、日本語では「タケノコのように育つ」と言いますが、フランス語では「キノコのように育つ」と言います。
なお、「マッシュルーム」はフランス語で「campignon de Paris」です。
キノコはなぜ単数形?
王子さまは「c’est un champignon !」と言っていて、ここでのキノコは1つだけ。
通常、キノコは複数形で登場するので、少々戸惑ってしまいそうな言い方です。
でもそれは、このフレーズの前半で「Ce n’est pas un homme」と言われてしまっている人物のことを指しているせいです。
王子さまに「人なんかじゃない、あれはキノコだ!」とまで言われている人とは、どんな人物なのでしょうか?
人として大切なこと
その答えは、このフレーズの少し前にあります。
王子さまは他の星で出会った、数字にしか興味のない男性を思い出して、「花の香りをかぐことも、星を見たり、人を好きになることもなく、計算ばかりしている」と評しています。
その人のことを「人なんかじゃない、あれはキノコだ!」と言っているので、キノコは1つだけなのです。
逆に言うと、王子さま、つまり作者にとっては、人として大切なのは「花の香りをかいだり、星を見たり、人を好きになったりすること」ということになります。
お金も大切ですが、王子さまに「キノコ判定」を受けないように暮らしていきたいと思います。
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シリーズ【フランス語版 星の王子さまのフレーズ】は、ポッドキャストでも配信しています。
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