まず先に…
今回は、まず始めに謝らせてください。
「このチキン野郎!」などという汚い言葉をタイトルにつけてしまったうえ、これから何度も連呼することになりますので。
ただし英語由来の「このチキン野郎!」とフランス語では成り立ちが違い、その違いを知るとフランス人の見る風景の一部(「かけら」と言った方がいいかもしれませんが)が見えてきます。
フランス語のニワトリ
フランス語の動物の名前は本当にややこしく、その代表例とも言えるのがニワトリです。
2026年3月13日配信の【動物のフランス語】④ニワトリでもご紹介していますが、オス・メスで全く違う名前ですし、子どもであるヒヨコも単純に語尾だけが変化しているわけでもありません。
- un coq(オス/総称)
- une poule(メス)
- un poussin(子ども)
「野郎」でも女性形
さて、「このチキン野郎!」をフランス語にする場合に使うフランス語は、「coq(オンドリ)」ではなく、「poule(メンドリ)」の方です。
日本語の「「このチキン野郎!」には「野郎」という言葉が含まれているため、どうしても男性のイメージが付きまといます。
けれどフランス語にする場合は、「poule(メンドリ)」つまり女性の方だということを覚えておいてください。
そして前述の【動物のフランス語】④ニワトリですでにご紹介済みですが、フランス語には「une poule mouillée(臆病者)」という言い方があり、日常会話で本当によく耳にします。
直訳すると「ぬれたメンドリ」なのですが、ぬれたメンドリはしょんぼりしていて弱そうというイメージから「臆病者」という意味になったようです。
フランス語では…
では実際に日本語の「このチキン野郎!」、これをフランス語ではどう言うのかをご紹介します。
- Espèce de poule mouillée !
(この臆病者め!→ このチキン野郎!)
になります。
文法的な説明
「Espèce de ~」という言い方は、フランス語らしい感情表現です。
「Espèce de + 名詞(冠詞なし)」という形で使われて、直訳すると「~の一種」になります。
でも実際の意味は「この~め!」「~野郎!」「~みたいなやつ!」といった軽蔑・怒り・呆れを込めた呼びかけです。
「espèce(種類)」自体も名詞(女性名詞)ですが、このような罵倒表現では冠詞が消えます。
通常の言い方の場合は、
- C’est une espèce de fleur.
(ある種の花だ)
のようになり、冠詞がつきます。
その他の例
そして「Espèce de ~」を使う罵倒表現では、他にも、
- Espèce de menteur !
(このウソつきめ!)
などが本当によく使われます。
こうした罵倒表現のもともとの構造は、
- Tu es une espèce de menteur.
(お前はウソつきの一種だ)
というものですが、これを感情的に圧縮しています。
主語・動詞を省略したうえ、冠詞さえも落ちて、感情だけが残った形なのです。
「そんな類いのやつ」というニュアンスで、やや軽蔑を込めているので、感情的で攻撃的な言い方です。
「チキン」との違い
ちなみに、日本語の「チキン野郎」は英語由来ですが、英語のニワトリには「戦わずに逃げる」という意味があるところから来ています。
それに対し、フランス語のぬれたメンドリには「みすぼらしく元気がない」という視覚イメージから来ています。
なおフランス語では「ぬれたメンドリ」であって、この文脈では決してオンドリになることはありません。
フランスのオンドリは誇りの象徴なので、「Espèce de poule mouillée !(この臆病者め!→ このチキン野郎!)」とは、正反対のイメージがあります。
「野郎だけどメンドリ」と覚えておいてくださいね!

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