意味の広がりや違いを感じよう!
日本で広く使われている外来語には、フランス語由来のものが少なくありません。
外来語があることでフランス語の単語が覚えやすくなる反面、本来の意味が抜け落ちたり、変わってしまうことすらあります。
外来語・元の単語の両方を知って、意味の広がりや違いを感じてください。
第34回目は、「マント」です。
日本語の「マント」
日本語の「マント」はフランス語由来の外来語です。
「マント」と言えば、「袖のないコート」や「肩から羽織る布状の服」を指します。
「肩から羽織る布状の服」でイメージしやすいのは、スーパーマンのようなヒーローが羽織っているものです。
- マント①「袖のないコート」
- マント②「肩から羽織る布状の服」
フランス語の「manteau」
フランス語の「manteau」 も、基本的な意味は「コート」なのですが、日本語とは違い、袖があるものを「manteau」と言います。
また後述しますが、ヒーローが羽織るようなものは「manteau」とは言わず他の単語を使うので、「manteau」にこの意味はありません。
それよりもフランス語では、「何かを覆う部分」という広い意味で「manteau」を使います。
比喩的な「覆い・層」、建築や家具の「装飾的な覆い」、科学用語としての「層」という意味などです。
特に科学用語の「層」に関しては、「manteau terrestre(地球のマントル)」がよく知られています。
「マントル」の語源も、「マント」と同じ「manteau」なのです。
フランス語の「manteau」の使い方をまとめると、
- manteau①「コート」
- manteau②「(比喩的な)覆い・層」
- manteau③「(建築や家具の)装飾的な覆い」
- manteau④「(科学用語の)マントル」
ということになります。
いろいろな「manteau」
「manteau」の例文を挙げておきます。
- J’ai mis mon manteau.
(コートを着た)
→ manteau①「コート」
- Elle a posé une photo sur le manteau de la cheminée.
(彼女は暖炉の棚の上に写真を置いた)
→ manteau③「(建築や家具の)装飾的な覆い」
- Le manteau terrestre se situe sous la croûte.
(地球のマントルは地殻の下にある)
→ manteau④「(科学用語の)マントル」
などがあります。
古臭いフランス語!?
ところで前述の「ヒーローが羽織るようなものは『manteau』とは言わず他の単語を使う」という件について触れておきます。
スーパーマンなどが羽織っている「マント」をフランス語では「cape」と言います。
これは先ほどまとめた意味のマント②「肩から羽織る布状の服」に当たるのですが、実はマント①「袖のないコート」の方も、フランス語では「cape」です。
そしてこの「cape」、外来語「ケープ」の語源になった言葉です。
ただし、「ケープ」という日本語をご存じない方もいらっしゃるのではないでしょうか?
というのも、フランス語由来の外来語の歴史は古く、現在はあまり使われなくなったものが結構あります。
「ケープ」もそのうちの1つで、舞踏会のドレスの上に肩から羽織る袖なしの服などを意味します。
ですが、そもそも舞踏会に参加するというのは一般的ではなく、それに派生した使い方もしなくなったので、現在はほとんど耳にしないのではないでしょうか?
日本語では古臭い外来語扱いの「ケープ」ですが、フランス語の「cape」は現役です。
今でもヒーローや魔法使いのマントや、袖なしコートの意味で、立派に使われています。

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