若者言葉から昇格した略語
フランス語で話していると、仏和辞書などには載っていないような言葉も耳にします。
元は若い人たちが仲間内で使っていた略語などがほとんどですが、時間とともに社会的にも認知されて、多くの人が使うようになった言葉です。
かしこまった場では使わなくても、仲の良い同僚となら使う程度の略語や派生語などを中心にご紹介します。
今回はその第21回目「apprenti」です。
「apprenti」とは?
「apprenti」とは、「apprentissage」の略で、「見習い」という意味です。
ただし元の単語「apprentissage」は「(職業の)修得」「職業訓練」「見習い期間」などの意味が強く、人としての「見習い」という場合は、本来は略語である「apprenti」を使うのが普通です。
「apprenti」は定着している単語なので、仏和辞書に載っていることも多いです。
本来は略語なのですが、正式な場面でもこのまま使われることが増えたためか、語末に「e」をつけた「apprentie」という女性形が存在します。
使用例
「apprenti」を使ったフレーズには、次のようなものがあります。
- Il est apprenti cuisinier.
(彼は調理師の見習いだ)
このフレーズの場合は「apprenti cuisinier」で「調理師の見習い」になっていますが、もちろん単に「見習いだ」とすることもできます。
- Elle est apprentie.
(彼女は見習いだ)
なお、このフレーズでは女性形の「apprentie」にしましたが、本来は略語なので、語末に「e」をつけない「Elle est apprenti.」にしてもいいことにはなっています。
ただし、「e」を忘れていると指摘されることがあるかもしれません。
略語を卒業した「apprenti」
前述通り、本来は略語の「apprenti」ですが、他の略語と比べて、現在は社会的な認知度が格段に高い言葉になっています。
というのも、フランスは若い人たちのための見習い制度がとても発達していて、あらゆる業種で見習い契約が一般的であるだけでなく、資格取得の条件に組み込まれていたりするからです。
そのため、本当にいろいろな場所で「apprenti」が働いていて、かなり多くの業種で「apprenti」がいなければ仕事が回らないと言われています。
日本よりひどい学歴社会のフランスですが、業種によっては、学歴・資格・経験の全てがなくても、見習い契約で働きながら経験を積むことができ、一定の期間が過ぎれば資格試験を受けられるようになります。
雇用する側は、見習いを受け入れることで政府からの補助金が出るので、みんなが得をするシステムなのです。
こうした背景もあり、今や「apprenti」は職業的な地位を指す言葉として広く認識されているため、履歴書や公式文書でも普通に使われています。
つまり略語やスラングとして捉える人は少ないので、目上の人や顧客相手に使っても、失礼になるということはまずありません。
「apprenti」の類義語
ところで、「apprenti(見習い)」の類義語に「disciple(弟子)」という単語があります。
ブログ・ポッドキャストの【フランス語版 星の王子さまのフレーズ】第380回でご紹介しました。
どちらも「何かを学ぶ人」ではあるのですが、現在は使い方が異なる言葉です。
というのも、今や「disciple(弟子)」という単語が使われるのは、宗教的・哲学的・芸術分野での「深い師弟関係」に限られているからです。
昔は職人の世界にも弟子制度があり、住み込みで学ぶような、師匠との深く密接な関係がありましたが、現在は単なる職業訓練上の上下関係になっています。
さらに「apprenti(見習い)」という言葉自体が法律や制度にも取り入れられたので、定着しています。
例外的な使用例
要するに、現代のフランスでは、ほぼすべての職人の弟子が「apprenti(見習い)」と呼ばれます。
ただしごく稀に、芸術や伝統工芸などの一部の職人の世界で、例外として「disciple(弟子)」という言葉が使われることもあります。
- Il est le disciple d’un grand maître verrier.
(彼は偉大なガラス工芸の巨匠の弟子だ)
このフレーズでは、技術に留まらず、偉大な師匠の哲学や精神を受け継ぐ人という意味で、例外的に「disciple(弟子)」が使われています。
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