「Va-t’en.」の復習と深掘り
このブログとポッドキャストの【フランス語版 星の王子さまのフレーズ】というシリーズの第369回で、「Va-t’en.」を扱いました。
このフレーズは「s’en aller」という代名動詞が元になっています。
少々複雑なので復習しながら、元の形「s’en aller」の活用や意味について深掘りします。
「va-t’en」の構成
まず、代名動詞や再帰代名詞をご存じない、または忘れてしまった場合は、【フランス語版 星の王子さまのフレーズ】の第369回を参照してくださるようお願いします。
その中で触れていますが、「va-t’en」は「s’en aller」という代名動詞が2人称単数になった「t’en vas」の命令形です。
命令形なので倒置が起きて語順が変わっており、慣れないうちは混乱しやすいものです。
「s’en aller」の活用まとめ
ここで「s’en aller」の活用をまとめておきます。
Je | m’en vais |
Tu | t’en vas |
Il/Elle | s’en va |
Nous | nous en allons |
Vous | vous en allez |
Ils/Elles | s’en vont |
2人称単数命令形
そもそも「s’en aller」は、「s’」が再帰代名詞で、それに「en aller」がついた形です。
そのため、再帰代名詞と「aller」の両方を活用させることになります。
そして「Va-t’en.」に関しては、2人称単数の「Tu t’en vas.」の命令形なので主語の「tu」が取れて「aller」の活用形「vas」の「s」も取れて「va」になり、さらに「va」が倒置されて前に出た形なのです。
加えて再帰代名詞や代名詞を含む命令形は「-(ハイフン)」でつなぐのが基本なので、「Va-t’en.」になります。
2人称複数命令形
同じことは2人称複数の「vous」でも起こります。
「Vous vous en allez.」が命令形になると、主語の「vous」が取れますが、「aller」の活用形「allez」はそのまま倒置されて前に出ます。
するとハイフンでつないで「Allez-vous-en.」になるのです。
1人称複数命令形
ちなみに、フランス語には1人称複数「nous」による第3の命令形もあります。
「~ましょう」という意味なので、命令と呼ぶには違和感があるものの、形は命令形そのものです。
「Nous nous en allons.」が命令形になると、主語の「nous」が取れますが、「aller」の活用形「allons」はそのまま倒置されて前に出ます。
するとハイフンでつないで「Allons-nous-en.」になるのです。
「s’en aller」の意味
では、ここからは命令形ではない「s’en aller」の意味について考えます。
前述通り「s’」は再帰代名詞、そして「en」は「そこから」、「aller」は「行く」という意味です。
「s’en aller」は「立ち去る」と訳されることが多いのですが、それは再帰代名詞を「自分」と捉えることで「自分をそこから行かせる」という本来の意味が転じたものです。
「aller」と「s’en aller」
というのも、「aller」は単なる移動の「行く」という意味ですが、「s’en aller」は「その場を離れる」「そこを出発する」という、行動の出発点に焦点が置かれています。
そうした意味から「s’en aller」を捉えると、「立ち去る」という表現が近いことは確かです。
ただし「s’en aller」を「立ち去る」と和訳すると不自然な場合もあります。
「s’en aller」の具体例①
では、どのような場面で「s’en aller」を使うのでしょうか?
例えば、離れて暮らす子どもが久しぶりに実家に帰り、両親と一緒にご飯を食べたとします。
食後も話していましたが、しばらくして「じゃ、もう行くね」と言う時に
- Je m’en vais.
を使います。
すると両親は少しばかり寂しそうに「もう行っちゃうの?」という意味で
- Tu t’en vas, déjà ?
などと言ったりするのです。
これを両方とも「立ち去る」にしてしまうと、かなり不自然ですよね?
「s’en aller」の具体例②
それに対し、語気を強めた「s’en aller」の場合は、かなり変わります。
夫婦が口論してしまい、どちらも謝る気配がなく、2人ともかなり怒ったままです。
どうにも収拾がつかず、同じ場所に2人でいることは耐えられなくなった1人が「出ていく!」という意味で
- Je m’en vais !
と言ったりするのです。
この場合は「立ち去る」に近いものの、やはり「もう、出ていく!」などの方が自然です。
なお「!」がついたからと言って、必ずしも「出ていく!」という意味になるというわけでもありません。
「s’en aller」には行動の出発点に焦点が置かれていることは確かですが、その場の状況や言い方によって、かなり意味に幅のある表現でもあります。
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