例文とともに理解しよう!
今回のフレーズには「~できる」という意味の「savoir +(動詞の原形)」が使われています。
「pouvoir +(動詞の原形)」も「~できる」という意味で使われますが、少しニュアンスが変わります。
簡単な例文でご紹介します。
このフレーズの場所と背景
では、単語に入る前に、今回のフレーズ「Je n’ai alors rien su comprendre !」の場所と背景を確認しておきます。
このフレーズは第8章最後の段落にある、王子さまのセリフです。
「je n’ai alors rien su comprendre」
「je」は「わたし」、「n’ai」は否定の「ne」の省略形「n’」と「avoir」の活用形(現在形)の「ai」が合わさったものです。
なお、否定の「ne(の省略形 n’)」は「何も~ない」という意味の「ne ~ rien」の一部です。
「alors」は「その時」「それなら」「それだから」などという意味です。
「su」は動詞「savoir」の過去分詞なので、「ai(avoir)+(動詞の過去分詞)」で、過去を表す表現です。
「savoir」は単独で使えば「知る」「知っている」という意味ですが、「savoir +(動詞の原形)」という形で「~できる」「~することができる」という意味になります。
動詞の原形部分「comprendre」は「理解する」「わかる」などの意味です。
背景を見てみると
遠く離れた地球の、それも人里離れた砂漠で、王子さまは自分の星に残してきた1輪のバラの花を思っています。
ある朝花開いたバラと出会い、王子さまはすぐにその美しさに夢中になりました。
ただし、わがままで見栄っ張りなバラに振り回されてしまった王子さまは、大好きなはずのバラを疑うようになり、苦しみます。
今回のフレーズは、バラへの対応の仕方を間違えたと後悔している王子さまが、語り手の男性を相手に「こうすべきだった」と振り返っている部分です。
「pouvoir +(動詞の原形)」
冒頭で触れた通り、「~できる」という表現には、「pouvoir +(動詞の原形)」もよく使われます。
このシリーズでも複数回、例えば第266回や第333回などで扱っています。
「pouvoir +(動詞の原形)」で表現する場合は、「何かをする能力や可能性がある」という意味での「~できる」です。
「物理的・状況的にできるかどうか」や「条件が整っているかどうか」という点が大切です。
「savoir +(動詞の原形)」
それに対し、今回のフレーズで使われている「savoir +(動詞の原形)」で表現するなら、「何かをする知識や経験がある」という意味での「~できる」です。
「その行為を行うための知識や技術を持っているかどうか」に焦点が当たっています。
2つの例文
説明だけではわかりにくいので、「nager(泳ぐ)」という動詞を使ってご紹介します。
どちらも「泳げる」というフレーズですが、ニュアンスが変わります。
- Je peux nager.
→ 水がある場所にいて泳ぐ能力がある - Je sais nager.
→ 泳ぐ技術を習得している
夏のビーチにやって来て「わーい!泳げる!」と言うなら「Je peux nager.」、「わたしはカナヅチじゃない、泳げる!」と言うなら「Je sais nager.」になります。
今回のフレーズの「~できる」
背景にある通り、今回のフレーズの場面では、王子さまが語り手の男性に、わがままで見栄っ張りなバラの花の話しをしています。
王子さまは自分が大人の対応をすることができなかったと、後悔しているのです。
バラの花は虚栄心からウソをついたりするのですが、王子さまはバラの本心をくみ取ってやることができずに苦しみます。
その結果、今回のフレーズ「Je n’ai alors rien su comprendre !(その時は何も理解できなかったんだ)」と言うのです。
この時の「理解できない」は、「理解する能力や可能性がない」という意味での「~できない」ではなく、「理解するだけの知識や経験がない」という意味での「~できない」という意味です。
そこで「pouvoir」ではなく「savoir」を使って表現しています。
王子さまは「その時の自分はまだ子どもで未熟だったから、バラの花を大人の対応で包み込んでやる余裕はなかった」と後悔しています。
…と語っている時点でも、まだまだ子どもではあるんですけどね!
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シリーズ【フランス語版 星の王子さまのフレーズ】は、ポッドキャストでも配信しています。
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