若者言葉から昇格した略語
フランス語で話していると、仏和辞書などには載っていないような言葉も耳にします。
元は若い人たちが仲間内で使っていた略語などがほとんどですが、時間とともに社会的にも認知されて、多くの人が使うようになった言葉です。
かしこまった場では使わなくても、仲の良い同僚となら使う程度の略語や派生語などを中心にご紹介します。
今回はその第2回目「pub」です。
「pub」の変化
「pub」は「広告」や「コマーシャル」を意味する女性名詞「publicité」のことです。
「publicité」が長いので、ただ単に短くしただけです。
ということは、「pub」の文法的な使い方は「publicité」に準じるということです。
つまり「pub」も「publicité」同様女性名詞なので、不定冠詞単数をつける時は「une pub」、定冠詞単数をつける時は「la pub」になります。
複数の時は「les pubs」のように語末に「s」をつけますが、発音は変わりません。
嫌われ者の「pub」
「pub」は「広告」や「コマーシャル」を意味するのですが、どちらかと言うとテレビコマーシャルの意味で使われてきました。
フランスでも、ごく最近は動画配信サービスなどを見る人が増えたことで、テレビ自体を見る人が少なくなっており、テレビコマーシャルとしての使い方が減ってきたようではあります。
ただしフランスのテレビを見ていると、見る人が減ったのも当たり前だと思う点があります。
それは、「pub」つまりテレビコマーシャルが、あまりにも長いからなのです。
フランスのテレビ事情
まずフランスのテレビ局で、コマーシャルを流さないところはありません。
日本のNHKのような公共放送局でも、他の局と同様にコマーシャルがあります。
しかもどのテレビ局でも、1度コマーシャルが始まると、ものすごく長いのです。
日本でドラマなどを見ている最中に流れるコマーシャルは、1回につき2~3分程度までだと思いますが、フランスではそれが延々と続きます。
日本のテレビに比べると、コマーシャルを流す頻度自体は少ないと思いますが、ひとたび始まれば、かなり待たされるのです。
「zapping」の背景
おそらくはそのせいで、テレビのチャンネルをひんぱんに変える「zapping」という行為をする人が増えたのだと思います。
そして英語由来の外国であるこの言葉「zapping」が市民権を得ただけでなく、フランス語独自の動詞が生まれたり、さらにはテレビに関係のない場面でまで使われるようになったのです。
この件に関しては、昨日(2024年8月26日)公開の【フランス語のフレーズ】日常会話で使う略語第1回「zapper」で詳細をご紹介しています。
「pub」の使用例
その中で触れているのが、フランス人の主人が若き日に「チャンネルをしょっちゅう変えるのは止めなさい!」と言われた出来事です。
そう言われた主人が、言い訳としてつぶやいたのが、「J’aime pas regarder les pubs.(コマーシャルを見るのは好きじゃない)」でした。
少しだけ文法的なことに触れておくと、「les pubs」が複数形になっているということ、「私は~が好きではない」という否定形は、本来「Je n’aime pas ~」ですが、「J’aime pas ~」という省略形になっています。
あらゆる広告に!
「pub」という言い方も、他の省略語のように若者言葉から始まったはずですが、現在は「publicité」と言うことの方が圧倒的に少なくなっています。
広告出稿をお願いする立場の営業が、初対面の顧客に使うなら「publicité」と言うと思いますが、日常会話ではほぼ「pub」です。
意味としては「テレビコマーシャル」のほか、YouTubeなどの動画配信サービスなどの「コマーシャル」、さらに公共交通機関や街中にある「掲出広告」や郵便受けに入れられる「折込チラシ」や「宣伝用のカタログ」に至るまで、ありとあらゆる「広告」を指します。
短くて発音もしやすいので、覚えておくと便利な単語です。
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