若者言葉から昇格した略語
フランス語で話していると、仏和辞書などには載っていないような言葉も耳にします。
元は若い人たちが仲間内で使っていた略語などがほとんどですが、時間とともに社会的にも認知されて、多くの人が使うようになった言葉です。
かしこまった場では使わなくても、仲の良い同僚となら使う程度の略語や派生語などを中心にご紹介します。
今回は、その第1回目「zapper」です。
元は英語
外来語の「ザッピング」という言葉をご存じでしょうか?
リモコンでテレビのチャンネルをひんぱんに変えることを意味する言葉ですが、英語由来なのだそうです。
フランス語にも英語そのままの「zapping」が入り、意味も同じだったようです。
ただしその後はフランス独自の進化を遂げています。
フランス語らしい動詞「zapper」が誕生し、意味も広がって、テレビに留まらずにいろいろな用途で使われるようになりました。
初めての「zapper」
私が最初に「zapper」を聞いたのは、結婚して2ヶ月ぐらい経った頃でした。
フランス人の友人が家にやって来て、主人と3人で食事をしたのですが、元々日本が好きだと言っていた人らしく、本当にたどたどしい私のフランス語にも嫌な顔一つせずに聞いてくれました。
慣れない生活だろうと心配してくれ、インターネットもない当時だったので「テレビのフランス語はわかる?」と聞いてくれました。
私が「彼(主人のこと)がチャンネルを変えるから、よくわからない」と言うと、すかさず主人に向かって
「Arrête de zapper !(チャンネルをしょっちゅう変えるのは止めなさい!)」と言ったのです。
第1の意味
この場合の「zapper」は「テレビのチャンネルをひんぱんに変える」という、英語の「zapping」そのままの意味です。
「Arrête de zapper !(チャンネルをしょっちゅう変えるのは止めなさい!)」という言い方は「arrête(止めなさい)」という親しい間柄の命令形ですが、それほど親しい間柄でなければ「Arrêtez de zapper !(チャンネルをしょっちゅう変えるのは止めてください!)」になります。
活用する?
なおこの2つのフレーズでは、「zapper」が原形のままで使われますが、フランス語の動詞の一番基本的な活用をするER動詞(語尾がER)です。
ただし一般的な動詞のように、規則通り活用させて使うというよりは、原形をそのまま使うフレーズや、発音は変わらない過去分詞の形で使うことが多いように思います。
過去分詞はzappé です。
意味も変化!
「zapper」という言葉は、今やテレビのチャンネルに留まらないどころか、テレビにすら全く関係ない場面でもよく使われます。
- 忘れる
J’ai complètement zappé de t’appeler !
(君に電話するのをすっかり忘れていた!)
- ~を避ける
J’ai zappé la réunion.
(会議をすっぽかした)
若干の注意点
前述通り「zapper」は若者言葉から始まっているので、フォーマルな場や目上の人相手なら使用を控えたほうがいいと思います。
親しい間柄なら、現在は高齢者も使うほど一般的になった言葉なのですが、場合によっては注意が必要です。
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