時間とともに変わるものも
今回のフレーズは場所を聞く疑問文ですが、実は現在主流の口語文ではありません。
もちろん文法的には正しいものの、時間とともに変わる表現もあります。
フランスで今使われている言い方をご紹介しますね!
このフレーズの場所と背景
では、単語に入る前に、今回のフレーズ、「Où est-ce « chez toi » ?」の場所と背景を確認しておきます。
このフレーズは、第3章の後半にあります。
1枚目の挿絵から2行目にあるフレーズで、語り手の男性のセリフです。
「où est-ce」
「où」は疑問詞で「どこ」という意味です。
「où」は「どこ」という意味の疑問詞の他に、場所を表す関係詞としても使われます。
「être」の活用形「est」と、「これ(それ・あれ)」を意味する「ce」の倒置が起こっていて、ハイフンでつながれています。
「chez toi」
「chez」は、「~の家に」「~の店に」「~にあっては」「~においては」といった意味で使われます。
「toi」は、2人称代名詞の単数です。
意味は「きみ」ですが、同じ2人称代名詞単数の「tu」の強勢形と言われる形です。
「chez」に人称代名詞がつく時は強勢形になるというルールがあります。
背景を見てみると
語り手の男性は当初から不思議に思っていましたが、王子さまが他の惑星からやって来たことは、ほぼ確定的になりました。
「他の惑星」ということに興味をそそられた男性は、立て続けに質問してしまいます。
「どこから来たの?」の次は、今回のフレーズです。
現在のフランスでは?
今回のフレーズは、「où(どこ)」は疑問詞なので文頭に来ており、疑問文なので倒置が起きて「est-ce」になっています。
文法的に正しいですし、『星の王子さま』が書かれた80年前には、あらゆる人がこのように話していたのかもしれません。
でも現在のフランスでこの通りに話せば、良くも悪くもフォーマルでクラシックだと受け取られてしまうと思います。
特に「chez toi」でわかる通り、2人称代名詞の「tu」を使う親しい関係での会話なので、余計にそう感じてしまうのです。
同じ2人称でも、「vous」を使う関係なら、キチンと話さなければいけない場である可能性もあるので、まだあり得ます。
自然な言い方は?
では同じことを言いたい場合に、現在はどう言うのかというと、「Où est « chez toi » ?」が一番自然です。
そしてさらにくだけた言い方にするなら、「C’est où « chez toi » ?」も可能です。
両方ともよく耳にしますし、私自身も使います。
見えてくる形
さらにこれを応用してみます。
「マリーはどこ?」と言うなら、「Où est Marie ?」「Marie, tu es où ?」などに。
「私の本はどこ?」なら、「Où est mon livre ?」「Il est où mon livre ?」などです。
放映中のテレビCM
ちなみに、現在フランスで放映中のテレビのコマーシャルに、参考になりそうな部分がありますので、共有します。
最初のシーンでは、一家のお母さんが屋根裏部屋でPCで動画をくつろいで楽しそうに見ています。
でも次のシーンでは、階下にいる中学生ぐらいの娘さんが、お母さんを探して叫んでいるのです。
娘さんが言っているのは、「Maman, tu es où ?」です。
ごく親しい間柄なら
CMでは他のシーンに入れ替わってしまうので、娘さんの登場シーンはこれでおしまいですが、状況としてはかなり探し回っている様子でした。
これが現実なら、この娘さんはお母さんが来るまで何度も叫び続けるはずです。
すると何が起こるかというと、始めのうちはかわいらしく「Maman, tu es où ?」と言っていたのが、次第に「T’es où, maman, t’es où ?」と、声を枯らして叫ぶと思われます。
「tu es」の部分が短くなって「t’es」になるということです。
ただしこれが通用するのは、家の中や、よほど親しい友だちとの間だけですので、ご参考まで!
この記事を音声で聞くなら
シリーズ【フランス語版 星の王子さまのフレーズ】は、ポッドキャストでも配信しています。
下のリンクのクリックでこの記事に該当するエピソードに飛びますので、発音の確認などにお使いくださいね!
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